【茨城・常陸大宮市の課題 市長選を前に】 (下) 《連載:茨城・常陸大宮市の課題 市長選を前に》(下) 新たな観光地創出

■通過点から周遊型へ 道路や鉄道「駅」拠点化
人口減と高齢化の課題を抱える茨城県常陸大宮市。魅力づくりや産業振興に期待がかかるのが、新たな観光地創出だ。
同市下伊勢畑の御前山ダム湖に2022年7月、カヌーやカヤック、ボートなど水上レジャーが楽しめる湖面利用がスタートした。ダムを管理する関東農政局への要望、同意を経て運用が始まった。
自然体験ツアーの企画運営会社「ストームフィールドガイド」がインストラクターを務め、23年5月から11月までに行った体験イベントは約30回。申込数は毎回定員を超える人気ぶりだった。
木々と空が青々と映えた湖にパドルを手にこぎ出す親子連れ。悠々とした色とりどりのカヌーやカヤックが楽しげに浮かんだ。同市の大自然を満喫できる自慢のアクティビティーの誕生だ。
▽成功例
同市の観光は「(同県の)水戸と大子の途中にある通過点に過ぎない」と言われ続けてきた。
16年開業でオープンから丸8年を迎えた「道の駅 常陸大宮~かわプラザ~」(同市岩崎)は、週末には駐車場が満杯状態になる。広場で親子連れがボールを追いかけたり、誰もが楽しめるバリアフリー遊具の人気も高く、観光地としての成功例である。
「(同県)大子町の袋田の滝やもみじ寺を見に行く途中、休憩に立ち寄った。川を眺めながら食事もできてよかった」という利用者の声もある。
しかし、同道の駅利用者が休憩後に向かうのは大子町方面から竜神大吊橋のある同県常陸太田市方面が定番だ。せっかく常陸大宮市に来ても、市内への周遊ルートが確立していない。
市内には美和地区の鷲子山上神社や「道の駅みわ★ふるさと館北斗星」、緒川地区の「やすらぎの里公園」、御前山地区には三王山自然公園、山方地区には休場展望台、明山など、風光明媚(めいび)な観光地が豊富にある。これらを結んだ周遊コースづくりが期待される。
▽駅前再開発
市の玄関口となるJR水郡線常陸大宮駅と周辺では、駅前再開発が進められている。
周辺道路の整備が一気に進む中、3月22日には駅舎と東西自由通路を新設する本体工事が始まった。新駅舎は25年1月ごろ、自由通路は26年春ごろの供用開始を予定しており、同市観光のスタート地点ともいえる拠点づくりとともに、今後のまちづくりや活性化にも期待が膨らむ。
これと合わせて、駅の西側にある市有地1.4ヘクタールに、西口広場とともに整備する「駅西交流拠点」が計画されている。
子育て世代を軸に、交流や憩いの場となる全天候型の公園をイメージした施設が描かれている。一方、費用対効果を上げる土地活用法を考えるべき、との計画見直し論もある。