【いばらきコロナ緩和1年】 (4) 《連載:いばらきコロナ緩和1年》(4) 地域の絆、再び強く 祭り、避難訓練、催し復活
田園風景の広がる茨城県水戸市北西部の国田地区に早朝、にぎやかな声が響いた。
「今年の田植え、いつから始めんの」「最近、ようやく血圧が下がってきた」
那珂川に架かる国田大橋のたもと。色鮮やかな花々が揺れる県道沿いの花壇で、地域住民ら約10人が雑草を取り除きながら、会話を楽しむ。
「国田に来る人は、ほとんどがこの道を通る。きれいにしておかないと」
国田地区自治実践会の会長、小田倉康家さん(72)は地域の目配りを欠かさない。ここは言わば、国田の「玄関口」。地元にとって大切な場所だ。
パンジー、ベゴニア、カンシロギク…。花壇は季節ごとに、さまざまな花を咲かせる。帰ってくる住民や訪れる客を一年中、出迎える。
元々は雑草が生い茂る場所だった。約10年前に自治会の会員有志で整え、ずっと景観を保ってきた。除草作業は1~2カ月に1回、2時間ほど。自然に声をかけ合い、集う。
「作業というか、交流の場だ」
■世帯数800、住民2千人。同地区は他の市内小学校区に比べ規模は小さい。人口減少は、全国的な傾向と変わらない。
少子高齢化は大きな課題だ。若い世代の市街地への流出は進み、子供会は解散した。地域の絆にも影を落とす。2020年以降のコロナ禍は、こうした状況に追い打ちをかけた。
「夏まつりも市民運動会も生涯学習フェスも、主な催しは全て中止になった」
特に、地域活動の中心を担ってきたのは、感染によるリスクが高いとされた60代を超える世代。厳しい行動制限に、無力感ともどかしさを感じながら時は過ぎた。
感染拡大の前年に当たる19年は、東日本台風による那珂川の氾濫被害に見舞われていた。水害から復旧が進んだ矢先に続いたコロナ禍。制限解除を待ち望む思いは、ひとしおだった。
■コロナが感染症法の5類に移行し、間もなく1年。地域の仲間と過ごす時間は増えた。一度は、陰りを見せた地域の絆。長過ぎたコロナ禍を経て、再び活発化しつつある。
水戸市内34地区のうち、22年に7割が規模縮小や中止に追い込まれた祭りなどの催しは、23年にほぼ復活を遂げた。避難訓練や市民運動会も再開。地域の催しは、災害時の備えや健康づくりを支える。
「コミュニケーションの大切さに、改めて気付かされた」
自治会加入率は全国的にも落ち込みが続く。同市内の平均では15年前に7割だった加入率が5割まで減った。一方で、国田は8割を維持する。
「どんな地域にしていくか。自分たちで考え、話し合い、決めたい」
必要なのは、住民のつながりだ。ずっと守りたい。地域のために。