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【大洗のあした】 (上) 《連載:茨城・大洗のあした》(上) 水道管更新に苦心 厳しい経営、広域化を模索

飲料水を求めて給水所に行列する町民=3月12日、大洗町役場
飲料水を求めて給水所に行列する町民=3月12日、大洗町役場


「飲み水がないのが一番困る」「水が茶色く濁ってお風呂に入れない」

今年3月、茨城県大洗町役場前の給水所に並んだ町民は、空のポリ容器を不安そうに抱えていた。

老朽化した水道管が漏水し、町内全域で断水や濁り水が起きた問題を受け、町は旧型の水道管が残る24.3キロの区間を10年間で全て更新すると決めた。総事業費は約55億円を見積もるが、人口減少で増収は望めず、費用の捻出に頭を抱える。国の交付金を活用すべく水道事業「広域化」の参加も視野に入れ、健全な水道経営を模索する。

▼繰り返された漏水

漏水は3月12日未明に同町大貫町の太い水道管で発生し、町内約6700世帯全てで断水や濁り水が起き、町内四つの小中学校が臨時休校。全面復旧は翌日夜だった。

町上下水道課によると、1971年埋設の旧型の石綿セメント管に亀裂が入った。町内水道管の総延長の約2割が旧型で、年間1.3キロを目標に耐久性の高いものに交換してきたが、人手不足で2023年度は約850メートルしか進まなかった。

町は完了まで約20年かかる見込みだった更新工事を約10年に縮める考えだ。本年度は今回の漏水箇所を含む450メートルを緊急整備し、工事費2億2000万円の補正予算を6月議会で可決。工事は漏水発生から約5カ月後の今月19日に始まった。工期は10月31日までだが、資材の調達が難航して完了は年内になりそうだ。

漏水は6月26日深夜も起きた。大洗磯前神社(同町磯浜町)沿いの県道で、65年に埋設した石綿セメント管から漏水し、旅館や別荘など7軒で断水した。この場所は過去に複数回の漏水があったが、比較的細い管だとして2028年度の更新を待っていた。町は整備計画の見直しを進めるという。

▼「町単独」の限界

水道事業は徴収した水道料金収入で賄う「独立採算制」が原則だが、経営が厳しく他会計の蓄えに頼る自治体は多い。町は料金収入だけでは賄えず、企業債で補ってきた。企業債残高は23年度末で約7億9000万円あり、事業者の貯金に当たる「内部留保」を取り崩して返済してきた。

町水道事業経営戦略(19年2月)は、20年度以降は企業債の新規発行が見込まれないとして、「残高は18年度の5億7800万円から27年度に3億9200万円まで減る」と見積もる。この公算は更新作業でたち消えになった。担当者は「企業債を借りないと更新できない。広域化(の補助金)で割合を抑えたい」と述べ、返済計画は「総事業費と広域化を決めないと立てられない」と吐露した。

料金収入は人口減や節水型機器の普及で減る見通しだが、22年9月に値上げしたばかり。約2億3000万円(23年度末)を蓄える内部留保も、更新工事に係る取り崩しで余裕はない。

町は災害復旧などで最低限必要な金額と将来の減り幅を試算していない。その理由を「蓄えの範囲でやれており、目標値設定の基準がなかった」と説明。しかし、今回の漏水で危機感を募らせ、貯金の在り方を見直したい構えだ。

この状況で更新工事の短縮は実現できるのか。同課は「事業費が莫大(ばくだい)で(町)単独ではやりきれない」と述べ、県が進める広域化の参加を模索する。国の補助金獲得が主な狙いだが、これは34年度までの時限措置で早期の事業着手が肝要だ。

担当者は広域化による将来的な値上げや非常用水源の確保を懸念するも、町外の助けを得るしか光明を見いだせていない。「(水道料金の)上げ幅を抑えながら更新を進めるため、町民に最善の選択をしたい」

27日告示、9月1日投開票の町長選を前に課題を探った。



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