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《連載:茨城・大洗のあした》(下) 海離れ 観光は潮目 閑散期の催し、独自性に力

30年前は100万人近い海水浴客でにぎわっていたという大洗サンビーチ海水浴場=8月15日、大洗町港中央
30年前は100万人近い海水浴客でにぎわっていたという大洗サンビーチ海水浴場=8月15日、大洗町港中央


大洗サンビーチ海水浴場(茨城県大洗町港中央)で約35年続く海の家「野火」を切り盛りする清水寿美さん(49)は、往時のにぎわいをこう振り返る。「お客さんは1日2千人くらい。食事の提供は1時間待ちだった」。かつて20軒近く営業していたという海の家も今年は3軒だけだ。清水さんは「カップルとか若い世代が減った。屋内プールや水族館に流れているのでは」と推し量る。

茨城県の観光客動態調査によると、大洗町の海水浴場への入り込み客が過去25年で最も多いのは1999年度で約101万人。2000年代は平均67万人が訪れたが東日本大震災を機に減り、19年度は約19万人、コロナ禍明けの23年度は約13万人と伸び悩む。19年度までは海水浴場が2カ所あった点を考慮すべきだが、海水浴客はここ30年で5分の1近い落ち込みだ。

町商工観光課は年々過酷さを増す夏の猛暑や、レジャーの多様化で海離れが進んでいると分析。「夏だけで稼げる盛り上がり」(町幹部)は昔話になり、町の観光は潮目を迎えている。

▼ライバルの存在

通年でにぎわう「四季型観光」を目指し、町は閑散期を狙った多彩な催しを繰り出している。

町への月別の入り込み客数(県調査)を見ると、22年度は1月に約60万人、8月に約54万人、5月に約40万人が訪れ、繁忙期が年に数回生まれている。同課は、1月は大洗磯前神社の初詣、5月はサンビーチの潮干狩りによる効果と分析する。

首都圏から日帰りできる好立地を逆手に取り、町は宿泊を伴う滞在は伸びしろがあるともくろむ。夜の観光資源の発掘を進め、海をライトアップする催しを企画。昨年10月は3日間で約4万人が訪れた。ただ、宿泊に結び付いたかは未調査だ。

町観光協会の大里明会長は、東京の半径100キロ圏に箱根や熱海、河口湖など有名観光地がひしめくことに触れ、「大洗ならではの歴史や文化を打ち出すことが差別化になる」と話す。

町独自の「物語」を伝えるべく、協会はホームページを3月に刷新。保養地や「開運の地」としての歩みをひもとく読み物を充実させた。サイトから町内宿泊施設の予約決済もでき、7月末までに6施設で計50件の宿泊を呼び込んだという。

▼暮らしとの両立

観光振興と併せて町民の暮らしやすさも守らねばならない。町は海に面した地区に主要な観光施設が点在し、夏は国道51号から大洗駅方面に向かう車列が2キロに及ぶなど渋滞が常態化している。

近年は5月の大型連休に潮干狩りの人気が白熱し、今年は10日間で約10万8千人が訪れた(昨年比約3万人増)。潮の満ち引きなど好条件が重なった4月28日は「過去に例を見ない混雑」(同課)で、通常5分で往来できる区間が2時間かかった。渋滞は町民の生活圏にも及び「農作業をしたいが田んぼに出られなかった」との声が町役場に寄せられたという。

町は観光客の過度な集中を抑えようと、主な観光施設と、その駐車場の混雑状況をリアルタイムで知らせる観光案内サイトの開設を進める。早ければ9月末の稼働を予定する。将来的には道路の渋滞情報も盛り込みたい考えだ。

同課の長谷川満課長は「盛んに誘客しても町のキャパシティーには限界がある。時期やルートが分散するよう工夫したい」と話す。



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