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【茨城・常総水害9年】 (上) 《茨城・常総水害9年》(上) 避難支える「共助」 住民と行政、連携強化

避難行動要支援者に対する支援策について話し合った防災イベント=今年2月、常総市三坂町
避難行動要支援者に対する支援策について話し合った防災イベント=今年2月、常総市三坂町


「住民同士で避難誘導できるようになれば理想的」。茨城県常総市三妻地区の防災連絡協議会で副会長を務める有田洋子さん(71)は力を込める。

市の住民基本台帳(2023年4月1日現在)によると、同地区は住民4315人のうち、65歳以上の高齢者が1404人。災害が発生すれば避難支援は欠かせなくなる。今年2月に開かれた防災イベントでは、住民約60人が「要支援者」にどんなサポートを提供すれば円滑に避難できるか意見を出し合った。

協議会の取り組みはまだ始まったばかり。まずは避難準備の在り方や1人暮らしの高齢者の安否確認などを着実に進め、最終的には避難所運営訓練につなげたい考えという。

鍵を握るのは住民同士の連携だ。協議会では今後、近隣への声かけなど共助体制構築を推進する方針で、有田さんは「災害時に住民みんなが助かるには地域での協力が不可欠」と強調する。


同市では、災害発生時にさまざまな事情で周囲の助力が必要な「要支援者」へのサポート体制整備が進む。

市防災危機管理課によると、今年8月末現在、要支援者として名簿登録されている市民は2252人。このうち希望する855人に対しては、個別の避難計画作成に乗り出している。

個別避難計画は、要支援者一人一人の置かれた状況に沿ったオーダーメードの避難計画。同市では障害の重さや高い要介護度など個人の実情に合わせ、避難先や避難所までの誘導などを担当する支援者も定め、事前に避難のタイミングも決めておく「マイタイムライン」も設置する。

支援充実に向けた新たなルールづくりも進む。市ではもともと、要支援者の氏名などの情報を外部に提供できない決まりだったが、災害発生時に迅速な支援を提供できるよう、23年9月に「市防災基本条例」の一部を改正。平時から警察や消防に要支援者の情報を提供できるようにした。


同協議会によると、三妻地区で要支援者として登録されているのは23年9月時点で178人。同協議会は住民の居住実態などを市に伝え、市が適切に避難計画を作成できるよう協力も続ける。

計画策定に当たる市防災危機管理課の草間裕介さんは「市では分からない情報が正確に把握でき、より適切な計画作成につながる」と語り、地域との連携効果を実感しているという。

同市が目指す体制は、要支援者1人に支援者2人。ただ、支援に重責を感じ、引き受け手が見つからないことも少なくない。

「地域の力で誰一人取り残さない」(有田さん)。市と住民の挑戦はこれからも続く。


関東・東北豪雨で鬼怒川堤防が決壊した常総水害から10日で9年が経過する。激甚化する災害に備え、地域防災の強化に奮闘する行政や住民の姿を追った。



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