【2024衆院選 課題を追う】 (1) 《連載:2024衆院選 課題を追う》(1) 物価高騰 もう限界 企業や家庭、負担重く
衆院選の投開票(27日)が約1週間後に迫る。茨城県内では物価高騰の影響や人口減少、人手不足など課題が山積している。
同県下妻市の老舗豆腐店、倉田食品。早朝の作業場で倉田伸社長(74)は、豆腐をつくる機械に輸入した大豆を入れた。「5年前、大豆は1袋30キロ入りで3000~4000円だった。現在は5000~6000円に上がっている」。
大正時代から続く店を父親から継ぎ、半世紀以上がたつ。頭を悩ませるのは生産コストの急増だ。近年、仕入れ値が上がった外国産大豆のほか、油揚げに使う菜種油の価格も18リットル当たり3000円前後から6000円以上に倍増した。
約3年前、1丁130円だった豆腐の価格を150円に値上げした。コスト上昇分を単価に反映させたが、みそ汁などに使われる豆腐は一般消費者にとって手頃な食べ物。「これ以上値上げしたら、客が離れてしまう」。今後もできる限り、価格は据え置く方針だ。
スーパーより粗利が高い農産物直売所に商品を卸すなどして対応してきた。純粋な利益は20年前と比べ、半分から3分の1。「耕作放棄地を利用して、豆腐に使う大豆を全て国内で賄えるような制度ができないものか」と訴える。
民間調査会社の調べでは、10月の食品値上げは今年最多となる2911品目。茨城県の最低賃金は10月、過去最大の時給52円引き上げられ、1005円となった。企業には材料費やエネルギー価格の高騰に加え、人件費の増加も重い負担となる。
納豆メーカー大手のタカノフーズ(同県小美玉市)は10月、大豆や物流費、人件費の高騰などを理由に、主力商品「おかめ納豆」全商品の出荷価格を12%以上値上げした。同社の役員は「企業努力をした上で、コストを消費者に負担してもらわないと事業継続が難しくなった」と話した。
石破茂首相は4日、秋に取りまとめる経済対策の策定に着手するよう閣僚に指示。衆院選後には物価高に苦しむ家計の負担を軽減するほか、地方経済の活性化を促すという。
物価を示す指標となる8月の水戸市消費者物価指数(2020年=100、生鮮食品を除く)は、前年同月比2.9%増の108.8。前年比で36カ月連続上昇している。長引く物価高騰は家計を直撃。年金世帯やひとり親世帯などは食費の捻出にも苦労する。
同県ひたちなか市のシングルマザーの女性(32)は「果物や野菜を、もっと子どもに食べさせてやりたい」と語る。生活保護を受け、5歳の娘と2人で暮らす。現在は家賃、光熱費などの支払いだけで生活が困窮。市内のフードバンク団体から食材の支援を受けている。
女性は「小学校に入学する子どものランドセルを買えるか心配だ」と将来への不安をもらす。政治には「安心して暮らせるよう、もっと子育て世帯に寄り添ってほしい」と願う。