【2024衆院選 課題を追う】 (5) 《連載:2024衆院選 課題を追う》(5) 教員不足 なお深刻 門戸広げ、働き方改革も
茨城県内教員の研修などを行う県教育研修センター(同県笠間市)で今月、小学校教諭を対象にした初任者研修が開かれた。
参加者らは情報通信技術(ICT)をテーマに、授業での活用方法や課題について若手ならではの視点から意見を出し合った。
同センターは本年度計117講座を設け、教員らのスキルアップを支えている。出席した同県つくば市立沼崎小の山鹿竜世教諭(23)は全国的な教員不足や働き方などを踏まえ、「子どもたちと教員の双方にとって負担がなるべく少ない。そんな教育の在り方が望ましい」と述べた。
県教委が発表した来春採用の公立学校教員選考試験の志願状況によると、全体の志願者は昨年度に比べ647人減の2911人。志願倍率は同0.76ポイント減の3.02倍で、過去3番目に低い水準だった。全体の合格倍率は同0.59ポイント減の2.45倍で、過去10年で最低となった。
全日本教職員組合の調査では、今年5月時点で、全国で4千人超の教職員の未配置が発生した。県教委によると、産休や育休などで教員が休職する際、代員が補充されない「未補充」は、県内でも9月1日時点で公立の小学校で101人、中学校で75人、高校で20人となっている。
教員を確保する対策の一つとして、県教委が取り組むのが受験者負担の軽減だ。2026年度採用から1次試験で「教職専門」を廃止。加えて民間企業との併願や教員への転職促進のため、企業採用で広く使われている「総合能力試験(SPI3)」を活用した選考枠を新設する。
さらに27年度採用からは、前倒し選考の対象校種をこれまでの小学校教諭のみから全校種・全職種に拡充する。採用試験を受けやすくし、教員志望の学生を早期に確保する考えだ。県教委の担当者は「数だけでなく、研修などにより教育の質の確保や働き方の改善も図っていく」と話す。
教員の働き方への不安もなり手不足の一因と指摘される。県教委が発表した昨年度の時間外在校等時間を見ると、公立小中高校で過労死ラインとされる月80時間超が一定数の割合で発生していた。
特に多かったのが中学校(義務教育学校後期・日立特別支援学校含む)だ。昨年4月の月間平均時間は50時間58分に上り、さらに月80時間超も全体の3.1%に見られた。
働きやすい環境に向け、県教委は本年度、教職員の長時間勤務の解消などを目的に、現役の教職員らでつくる「働き方改革ブレイクスルー会議」をスタート。会議で出されたアイデアを基に、モデル校での実践に向け調整中だ。
意欲ある教員の確保は、児童生徒の学びやすさに直結する。初任者研修に参加した山鹿さんは「子どもたちに寄り添う先生」を自らの目標とする。(おわり)