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【叫び 茨城・いじめ現場から】 (4) 《連載:叫び 茨城・いじめ現場から》(4) 癒えない心(下) 最後まで「謝罪」なく 訴え無視した同級生

県と元同級生を相手取り、道子さん=仮名=は民事訴訟を起こした=水戸地裁
県と元同級生を相手取り、道子さん=仮名=は民事訴訟を起こした=水戸地裁


通っていた高校の校舎2階から飛び降りた道子さん(22)=仮名=が目を覚ますと、病院のベッドの上だった。

病室で見た交流サイト(SNS)の書き込みには「文化祭つぶしたんだから土下座して謝れ」「デブだから肉のお陰で助かったんじゃない?」「文化祭をつぶすために飛び降りた」。心ない言葉が、さらに心を打ち砕く。

入院中も当時のいじめが脳裏をよぎり、夢にも出た。「もう一度飛び降りたら、ちゃんと知ってもらえるのかな」。道子さんの被害に我慢できず学校に乗り込んだ兄は教員らに取り押さえられた。

▽サポート不十分

茨城県教育委員会は2018年12月、いじめ防止対策推進法の「重大事態」と判断し、第三者委員会を設置して実態解明に乗り出した。

第三者委は生徒や学校関係者への聞き取り調査を経て、翌19年4月、報告書で「いじめがあった」と認定。教員のサポートが不十分だったことも「見放され感を強め、自殺を計画することの要因となった」との見方を示した。

いじめが続いた背景の一つは、学級運営の維持を優先した教員の姿勢。報告書では「(教員が)『お互いさま』の精神で被害者側に対応することもあり、孤立を深めていった」と問題点を指摘した。

ただ、報告書には別の生徒のいじめ被害についても記載されていたためか、公表は見送られた。

▽民事訴訟で和解

「このままでは、いじめがなかったことにされてしまう」

報告書が公表されなかったため、道子さんは21年1月、在学中のいじめで自殺未遂に追い込まれたとして、県と元同級生2人を相手取り、慰謝料などの損害賠償を求める訴えを水戸地裁に起こした。当時、県は答弁書で「学校は当時可能であった一定の対応を行っている」と主張。県と元同級生1人はいずれも棄却を求め、争う姿勢を示した。もう1人の元同級生は出廷せず、答弁書も提出しなかった。

県や元同級生の1人との和解が成立したのは23年12月。県は140万円、元同級生1人は10万円をそれぞれ支払う内容だった。県教委高校教育課は、当時のいじめ対応について「一定の対応を行ったが、不備があった」としている。

▽今も納得できず

元同級生2人のうち1人は、同地裁への出頭も反論もなく、事実上、訴えを無視。同地裁は24年1月、この同級生に約860万円の支払いを命じ、判決はそのまま確定した。

求めていた謝罪の言葉は最後まで聞けずじまい。両親は「今も心からの納得はできない」と明かす。

道子さんは現在、家族や新しい友人との時間を大切にしながら過ごしているという。以前は控え気味だった、自分の考えを主張するようにもなった。

「何も言わなければつぶされてしまう」。そうつぶやいた表情に、まだ癒えない心の傷が浮かんだ。



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