《連載:茨城県内2024 10大ニュース》福島デブリ、大洗搬入
■性質分析、廃炉へ一歩
東京電力福島第1原発事故で発生した溶融核燃料(デブリ)が11月12日、茨城県大洗町の日本原子力研究開発機構(原子力機構)の研究施設に搬入された。1年程度かけ、性質や構造を詳しく分析する。2011年3月11日の事故から13年8カ月。40年かかるとされる廃炉への一歩を大洗で踏み出した。
デブリは直径5ミリ程度の小石状で重量約0.7グラム。搬送前の放射線量は、作業員の被ばくを抑える目安の毎時24ミリシーベルトを下回る0.2ミリシーベルトだった。
東電が8月、福島県大熊町の福島第1原発2号機で試験的な取り出しに着手。トラブルによる作業中断もあり、約2カ月半後の11月7日にデブリの採取が完了。同町から大洗町まで陸路で搬送された。
原子力機構は大洗工学研究所でデブリを受け取り、X線CT検査装置や電子顕微鏡など複数の分析装置を備える照射燃料集合体試験施設(FMF)に運び込んで、同14日に本格的な分析を始めた。
分析は3段階。最初の「非破壊分析」はデブリの重量や放射線量の測定や表面の元素分布を分析する。次にデブリを切断・研磨して電子顕微鏡で観察する「固体分析」で、成分や結晶構造を調べ、事故時の炉内温度や冷却状況を推定する。
最後の「化学分析」は、粉末状にしたデブリを硝酸で溶かした上で質量を分析。成分のほか、核分裂の連鎖反応が続く臨界の可能性などを調べる方針だ。
原子力機構は非破壊分析の結果を25年3月までに発表するとしている。その後、固体分析は約半年、化学分析は早ければ約3カ月で結果が出るという。
固体分析は日本核燃料開発(大洗町)、化学分析は原子力機構原子力科学研究所(茨城県東海村)とMHI原子力研究開発(同)でも行い、FMFと同様の結果が得られるかどうかを確認する。
今回搬入されたデブリは予定より少量だった。それでも原子力機構は「必要な情報が得られると考えている。0.7グラムは非常に大きなスケール」と強調した。
炉心溶融(メルトダウン)を起こした1~3号機のデブリは推計880トン。金属やコンクリートなどの構造物と不均一に混じり固まったもので、各号機で形状や堆積範囲は異なり、未解明な点も多い。
極めて強い放射線を出すデブリの全量取り出しは廃炉に不可欠。一方、その方法は確立されていない。このため、採取されたデブリの分析データは「炉内の状況把握や今後の取り出し規模の拡大に生かせる」と関係者は期待する。
デブリからは核分裂反応に伴う物質が検出された。原子力規制委員会は「核燃料の一部」との認識を示した上で「重要な一歩」と評価。山中伸介委員長は「いろいろなサンプルをいろいろな場所で取ることが重要」として「引き続き採取を」と要望した。