【トランプ関税24%ショック】 (上) 《連載:トランプ関税24%ショック》(上) 輸出業者、知恵絞る 茨城県内「チャンス」「厳しく」

米国向けにドア金物の輸出拡大を今後計画している「久力製作所」(茨城県行方市小貫)。米国内でアマゾンの通信販売が好評なため、3年前から日本貿易振興機構茨城貿易情報センター(ジェトロ茨城)の支援を受けながら、BtoB(企業間取引)での販路拡大を図ってきた。久力章喜社長(55)は「大きな市場を狙っていこうと動いてきた」と語る。
すでに米国の営業代理人と契約。ホームセンターなどとの交渉を進めているが、価格設定が厳しいため「関税の上乗せは影響しそうだ」とみる。関税政策を受け、現地の代理人からは「価格を安くできるか」と相談を受けたという。
同社は事業の縮小や撤退は考えていないとし「インフレで米国メーカーも値上げとなれば、関税は関係なくなる」と見据える。
米国への輸出準備を約2年前から進めてきた「森島酒造」(同県日立市)は、早ければ今月にも輸出を開始できる予定だ。現在、現地取引先からの連絡を待っている状況で、森嶋正一郎専務は「現地の対応を見守る。自分たちは良い酒を造り続けるしかない」と話す。
老舗酒造の「木内酒造」(同県那珂市)は、ビールやウイスキーを世界各国に輸出。ビールは生産量全体のうち4割が輸出向けで、うち半分が米国行きという。
コンテナ運賃の低下などに期待し、当面は値上げしないという。カナダでの米製品の不買運動や米中関係の悪化から、木内敏之社長は他国の市場を攻める「チャンス」と、前向きに捉える。
コメの生産者でつくる「茨城県産米輸出推進協議会」(93人)は2016年の設立以来、会員数が増加傾向にある。24年は同協議会の会員で、コメの輸出や卸売りを手がける「百笑市場」(同県下妻市)を通じ、計2121トン(同協議会外を含む)を29カ国に輸出。米国向けは25%の約500トンと最も多かったという。大曽根隆会長は「生産者にとって単収が一番大事」とし、「資材や人件費高騰で、誰もぎりぎりで経営している。厳しくなる」と見通す。
常磐大副学長の菅田浩一郎教授(経営学)は「県内には高い技術力と品質の高さを誇る企業がある。知恵の出しどころ。いかに乗り越えるか」と力を込めた。
米トランプ政権が「相互関税」の第2弾を9日発動した。県内の輸出業者の受け止めや、支援の動きを追う。