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《連載:自律 茨城・水戸市中核都市5年》(下)効果、市民に発信へ 新たな要望・提案 期待

水戸市役所の窓口には中核市移行を記念した小さなのぼり旗が飾られている=水戸市中央
水戸市役所の窓口には中核市移行を記念した小さなのぼり旗が飾られている=水戸市中央


「権限・財源・知名度。いずれを取っても大きな恩恵を受けた」。2012年4月に中核市から政令指定都市に移行した熊本県熊本市の担当者は語る。熊本県並みの権限を得たことで、中核市に比べ自治力が格段に高まった上、「全国で20しかない大都市のブランド力も備わった」と強調する。

「政令市と中核市では存在感の差は歴然」。茨城県水戸市関係者はつぶやく。中核市市長会も「権限、財源とも不十分」とし、毎年のように国に改善を求めてきたが、抜本的な解消には至っていない。人口26万5千人(4月1日現在)の水戸市にとって、政令市移行(要件50万人以上)の壁は高い。


水戸市は中核市の効果に「都市のイメージアップ」を挙げる。対政令市で見ると、権限、財源、ステータスとも見劣りするが、それでも「政令市に準じた中核市として位置付けされることで、自治体として箔(はく)が付く」と市担当者。茨城唯一のリーダー都市として「自治体競争を生き抜くベースとなる」と捉える。

一方、市民からは「(中核市移行で)どう変わったのか分かりにくい」との声も聞こえてくる。移行時期がコロナ禍と重なった不運もあるが、「具体的に目に見え、実感することができるまでいまだ時間を要する」と県地方自治研究センターが指摘するように、全市的に浸透しきれていない印象は否めない。

水戸市の1年後に中核市移行した長野県松本市も、イメージアップ戦略には苦慮している。市の担当者は「市民目線で大きく変化したという実感が薄い」と分析し、キャッチフレーズを駆使するなど情報発信に力を注ぐ。

水戸市は「移行に伴う成果は多い」(市行政経営課)とするも、市民の暮らしに直結する業務が少ないため、「効果がどうしても見えにくく、市民に伝わりにくい」と吐露する市関係者は少なくない。


「県対44市町村の構図から県対水戸対43市町村に変わり、県と市町村の新たな関係が切り開かれた」。常磐大の吉田勉教授(地方自治論)は、水戸市の中核市移行が茨城県の地方自治行政の転換点になったとみる。

茨城県の特色を「核となる大都市がなく、廃棄物行政や保健所運営など県に頼りがち」と分析。コロナ禍での市の対応を評価し「県から自立した行政運営が市にもできることを示せたのは大きな成果」とみる。

中核市移行の成果を広く知ってもらうことが、次のステップに進む鍵という。「成果をもっとデータや実例とともに市民に見える形で公開を」とした上で「市民側の理解が深まれば、新たな要望や提案が出てくるだろう」と展望する。

市を「(周辺地域の)目指すべき兄貴分のような存在」。市が県と一定の距離を持って自発的に政策を実現する姿勢は「目指すべき行政運営の在り方として注目される」と評価する。



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