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【命のゆりかご~涸沼ラムサール登録10年~】 (中) 《連載:命のゆりかご~茨城・涸沼ラムサール登録10年~》(中) ワイズユース

涸沼水鳥・湿地センターの展示施設で専門員から涸沼の解説を受ける来館者=茨城町下石崎
涸沼水鳥・湿地センターの展示施設で専門員から涸沼の解説を受ける来館者=茨城町下石崎


■センター拠点に活用 観察へ「導線できた」

「涸沼には、こんなにたくさんの生き物がいるんだ」。5月24日、茨城県茨城町下石崎の涸沼水鳥・湿地センター展示施設。専門員の解説を聞いた人たちから声が上がった。休日には野鳥観察や釣り、サイクリングなどの目的で涸沼を訪れた人たちが立ち寄る。

センターは昨年11月10日に供用開始。茨城町に展示施設、対岸の同県鉾田市箕輪に観察棟がある。展示施設は涸沼の歴史やラムサール条約登録への流れ、涸沼の生態系などを展示。土日祝日には生物に詳しい専門員が在駐し、レクチャーを受けることができる。一方、観察棟に専門職員は常駐していないが、2階に多数の望遠鏡を設置。順光で静かな環境のため、じっくりと野鳥を観察することができる。ラムサール条約で提唱される「ワイズユース」(賢明な利用)。湿地の生態系を維持しつつ持続的に利用する考え方だが、センターを活用した活動が始まりつつある。

「これまでの涸沼のことを知ろうと思っても、教えてくれる施設はなかった」。展示施設の横田祐之センター長は胸を張る。来場者は4月末時点で累計1万人を突破。地元住民も改めて身近にどんな自然があるのかを実感することができた。野鳥観察を目的とする県内外の来訪者も展示施設に訪れ、情報交換を行う。今では利用者同士で新たなコミュニティーが生まれそうだという。

▼実感

センターを活動拠点とするのは逆川こどもエコクラブ(同県水戸市)。逆川や千波湖、涸沼などでホタルの保全や外来種の捕獲、環境学習を実践する。

事務局長で県地球温暖化防止活動推進センター長の川島省二さん(60)は「センターがオープンしたことで人が集まりやすい環境が整った」と語る。「展示を見た後、ハゼ釣りや昆虫観察ができるフィールドにつながる導線ができた」と活動の幅を実感する。

涸沼では会員らがネイチャーガイドの養成講座や環境学習会に参加。特にネイチャーガイドは登録138人のうち64人がクラブ関係者だ。展示施設の専門員も7人のうち5人を輩出し、環境学習で指導的な役割を担う。

▼提案

クラブに小学1年から参加する飛田泰寛さん(19)は現在、東京都内の大学で環境保全や生態系などを学ぶ。「最近は野鳥の数が減ってきているように感じる」と語り、センターで継続的に記録することを提案。「涸沼にどんな生き物が生息しているか。その情報を保管することが環境保全につながる」と訴える。

川島さんは「環境保全を続けるには、子どもから大人まで全ての世代に涸沼の守り方、楽しみ方を知る人が必要」と唱える。

涸沼を知ることができる施設は完成した。今後はセンターを核として地元だけでなく、県内外にその魅力を発信し、多くの人に関心を持ってもらうことが求められる。横田センター長は語る。「まずは来館してもらい、涸沼を知ってもらうことが最初のステップ」



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