【悲願の夏 高校野球茨城大会】 (下) 《連載:悲願の夏 高校野球茨城大会》(下) 水戸三

■創部2年目、単独出場 選手14人、初勝利に挑戦
茨城県立水戸三高(同県水戸市)の野球部が、創部2年目で念願の単独出場にこぎ着けた。来年、創立100周年を迎える同校に、夏の高校野球茨城大会の初勝利を目指す選手14人が集まった。主将の永山奏汰選手(17)=2年=は「一生懸命に挑戦する姿を見せたい」と目を輝かせる。
同校は1926年に水戸市立高等女学校として開校。49年の男女共学化に伴い、現校名となった。現在も全校生徒868人のうち女子生徒が9割弱を占めており、一昨年まで野球部はなかった。
こうした状況もあり、練習環境には恵まれていない。平日の練習はソフトボール部などが使用する校庭の一角で過ごし、ティー打撃は校舎そばのアスファルトの上で行う。週末は近隣高の野球グラウンドを借りたり、他校に練習試合に赴いたりする。
それでも「成長は自分たち次第。各選手が考えて動けるようになった」と永山選手。厳しい環境下、工夫を凝らしながら技術を高めてきた。
野球部が発足したのは昨年5月。水戸短大付(現・水戸啓明)高時代に甲子園の土を踏んだ元球児、柴田優太監督(41)が4月に立ち上げた同好会を前身とする。
同好会メンバーだった永山選手を含む6人全員が部員となり、昨夏は3校連合として同校初の茨城大会に出場。勝利には届かなかったが、女子生徒が大半を占める同校の野球部が白球を追う姿は注目を集め、各所に影響を与えた。
地域の期待が高まり、バットやグローブ、防具など大量の寄付が集まった。「昨夏の戦いぶりを見て決めた」と入部する選手がいるなど、今春には全員経験者の新入生7人が加わり、2年生1人も入部した。
結果、創部2年目で単独出場できることになった野球部。永山選手は「新たな歴史をつくるチームに失うものはない。九回まで戦い抜き、勝つことができたら最高」と力を込める。
初戦は7月7日。ブラスバンドやチアによる全校応援はない。柴田監督は「時間をかけ、応援されるチームに成長していくことが必要」と先を見据えた。
応援されるチームへ、さらなる一歩を踏み出す水戸三高。夏空の下、大声量の校歌を響かせることができるか。