《連載:参院選茨城 思いをどこへ25年》 苦境の農家「助成を」 のしかかる資材費高騰

イチゴ農家として、茨城県鉾田市内で「とちおとめ」を栽培する大和田健一さん(57)。1粒ずつ丁寧に箱詰めした完熟イチゴは、トラックで都内の大田市場などに運搬され、大手百貨店やスーパーなどの店先に並ぶ。運送費は月に20万円から30万円かかり、段ボールやビニール、燃料、肥料なども全てが値上がりしていると言い、「これらの経費はもう安くはならないだろう」と肩を落とす。
毎年5月中旬から苗づくりを始め、11月下旬から翌年5月まで収穫に追われる。妻の日十美(ひとみ)さん(56)らとともに作業を行い、多い日には約300キロのイチゴを手作業で収穫する。
「とちおとめ」は、ケーキの飾り付けに最適で「誰が食べてもおいしい」というのが売り。その一方で、競争が激しく、ほかの農家との差別化が求められる。
大和田さんは、イチゴ全体に甘みを浸透させる栽培方法を採用。一般的なイチゴよりもハウス内での栽培期間を長くすることで、果肉内部の白い部分を減らしている。極(きわみ)と名付けられた商品は、収穫直前まで熟成させることから「香りと糖度に優れ、味は良いが、その分、果肉が柔らかくなり(出荷できない)リスクも高まる」。
ハウス内では光合成を促すため、プロパンガスを使った燃焼式の炭酸ガス施用機やウオーターカーテンなどを使う。
こうした手間暇は、資材費の高騰で余計に経費がかかるようになった。価格転嫁も必要な状況で「どのイチゴ農家も苦しい」と吐露。国は一部の農業に偏らず、イチゴを含め「さまざまな農家へ助成を手厚くしてほしい」と求める。
ただ、市場での取引価格については「本来の標準的な価格に戻りつつある」と評価。クリスマスシーズンを除き、これまでは安すぎたとみる。食べた消費者が、商品の魅力に気付いてくれれば「高くてもまた買ってくれるはず」。一人でも多くリピーターを獲得できるよう、おいしいイチゴを極める。
参院選が3日公示された。物価高、高齢化など多くの課題を前に、有権者は1票に何を託すのか。地域の現状を探る。