《連載:検証 参院選茨城》(中) 参政・桜井氏、SNS奏功

■不満・不安 受け皿に
「すごい、もうすぐ30万票だ」。開票日の20日夜。茨城県つくば市倉掛にある参政新人、桜井祥子氏(41)の選挙事務所。開票速報に党員らが沸いた。
目標20万票に対し、ふたを開ければ1.5倍の30万8772票を獲得。2022年の前回参院選で参政候補が取った約6.4倍。立憲民主現職を破る大金星に加え、県内比例代表でも「野党第一党」となる17万9563票を集めた。
選挙戦で、過度な外国人受け入れや選択的夫婦別姓に反対し、減税と積極財政による子育て支援などを訴えた。党県連の飯塚美穂会長は「暮らしの豊かさを感じられない無党派層や若い世代に、桜井さんの言葉が刺さった。県民の不満や不安の受け皿になれた」と勝因を分析した。
■固い結束力
有効だったのはSNS(交流サイト)戦略だ。政治に関心がない人にも党の主張を聞いてもらおうと、街頭演説を短くまとめた動画を配信。桜井氏も支持者から寄せられたメッセージに自ら返信していた。
その結果、桜井氏のX(旧ツイッター)フォロワーは開票日時点で約1万1400人と公示前の倍以上に増加。桜井氏は「SNSがなかったら参政党の躍進はなかった」と言い切った。
結党5年。茨城県に組織を立ち上げたのは22年5月。県内の地方議員はわずか3人だが、党員とサポーターは約1500人いる。
県連は党員らにSNSなどを使って日頃の活動やポスティングを依頼。自民、立民のような組織力はないものの、「中心となって動く党員の結束力は固い」と飯塚会長は胸を張る。
実際、県内約9000カ所ある掲示板のポスター貼りも、公示翌日にはほぼ完了。機動力の高さを見せた。
■「日本人第一」
公示直前に党所属の国会議員が5人となり、神谷宗幣代表がメディアに登場する機会が増えたことも追い風となった。
神谷代表は2度県内入りし、13日の守谷駅には約2000人(陣営発表)、19日の水戸駅には約1100人(同)の聴衆を集め、人気の高さをうかがわせた。
水戸駅では「グローバリズムのせいで国民がお金を吸い上げられ、中間層が貧しくなっている。子どもが減って、その分を外国人で穴埋めしようとしている」などと経済再生を訴えた。
同県ひたちなか市で桜井氏の演説を聞いた男性(35)は「これまでは自民党や日本維新の会に投票してきたが、神谷さんが演説する動画を偶然見つけて支持するようになった」と明かし、「参政党は自分の1票が意味ある1票になることを期待させてくれる政党だ」と話した。
ただ、参政が掲げた「日本人ファースト」が排外主義につながるとの懸念もある。街頭演説の会場ではやじやプラカードで対抗する人たちの姿も見られた。桜井氏は当選後の会見で報道陣から外国人問題について聞かれ、「差別ではなく、日本人の生活を守ることが第一ということ」と述べた。