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【検証 茨城・大井川県政2期8年】 (上) 《連載:検証 茨城・大井川県政2期8年》(上) 好機捉え経済力強化 矢継ぎ早に施策、摩擦も

JX金属の常陸那珂工業団地第1期拡張地区への誘致が決まり、同社の林陽一社長(左)と面会する大井川和彦知事=5月、県庁
JX金属の常陸那珂工業団地第1期拡張地区への誘致が決まり、同社の林陽一社長(左)と面会する大井川和彦知事=5月、県庁


任期満了に伴う9月7日投開票の茨城県知事選は、3回目の当選を目指す現職の大井川氏と新人の茨城大名誉教授、田中重博氏(78)の一騎打ちとなる公算が大きい。焦点の一つとなる2期8年の大井川県政を振り返り、検証する。

同県ひたちなか市新光町の常陸那珂工業団地第1期拡張地区では、昨年3月以降、造成工事が進む。県は地区の4割に当たる9.4ヘクタールを、非鉄金属大手のJX金属(東京)に売却。同社は隣接地に半導体や電子機器向けの先端素材を生産する新工場を整備中で、生産体制の増強や新事業の創出に乗り出す。

「茨城県の未来にとって、大きな意義がある」。今年5月、同社の林陽一社長と面会した大井川和彦知事は、先端半導体材料のトップメーカーによる拠点新設に大きな期待を寄せた。

大井川知事は2017年の就任以降、「企業誘致」を重要政策の一つに位置付けてきた。販売実績が上がらなかった工業団地の分譲価格を見直して販売を進めてきたほか、21年度には営業戦略部の立地推進担当部を独立させ、企業リサーチや分析による戦略的な営業を展開している。

経済産業省がまとめた24年の工場立地動向調査によると、茨城県の「県外企業立地件数」は8年連続で全国1位。企業誘致は着実に成果を生み出している。

大井川県政の基本姿勢は「挑戦」「スピード感」「選択と集中」。近年の激しい環境変化に対応するため、茨城県の限られた資源を生かし好機を捉えながら経済力の基盤強化に挑んできた。

10年に開港した茨城空港は、航空自衛隊百里基地と当初交わした民間機による「1時間1着陸」ルールの緩和に着手。23年には弾力的な運用を実現し、福岡便や神戸便の路線拡充に結び付けた。

旅客数はコロナ禍で落ち込んだものの、24年は過去最多の77万6000人まで回復。利用拡大に向けた「将来ビジョン」では40年代に旅客数170万人を掲げ、ターミナルビルの機能強化やビジネスジェット需要の取り込みを盛り込み、「首都圏第3の空港」としての位置付けを目指している。

一方で、矢継ぎ早に繰り出す施策により摩擦も生まれた。特に県有施設の処分では、22、23年に同県つくば市へ洞峰公園(同市)を無償譲渡したほか、鹿島セントラルホテル(同県神栖市)の民間売却、県内4カ所にある青少年教育施設の統廃合なども相次いで決めた。

「放っておくと、30年間で3兆円の負担になる」。かさむ維持費を背景に、聖域を設けず先手で対策を打ち出す大井川知事の方針は、県議会が臨時会を開いて調査特別委員会を設置するなど一部で反発を招いた。

委員会は計12回に及ぶ審議を重ね、適正運営に向けた提言や議会による継続的関与を盛り込んだ報告書を提出。毎年、県有施設の運営状況を定期報告するよう求めた。委員を務めたベテラン県議は注文を付ける。「もっと慎重に、議論を深めていけるといい」



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