【検証 茨城・大井川県政2期8年】 (下) 《連載:検証 茨城・大井川県政2期8年》(下) 外国人材受け入れに力 「南北格差」は拡大一途

「労働力不足を乗り越えるため、外国人の方々に茨城県で活躍していただく必要がある」。インド北部の総合大学、アミティ大との覚書締結を1週間後に控えた昨年7月、定例記者会見で大井川和彦知事は外国人材の茨城県受け入れに対する思いを力説した。
世界最多となる約14億人の人口を誇るインドは、理系分野に優れた人材が多い半面、就職難に陥る若者も増えている。同大との連携は、県内企業へのインターンや日本語教育支援などを通し、大学卒業後に県内への就職を後押しすることで茨城県産業の担い手不足を解消する狙いがあった。
民間信用調査会社のまとめによると、正社員の人手不足を感じている県内企業の割合は今年4月時点で53%。大井川県政では、人口減少による企業の人手不足が顕在化する中、外国人材の受け入れや育成、定着に加え、来県後の生活支援などにも力を注ぐ。
一方、外国人の適正雇用は大きな課題だ。出入国在留管理庁が調べた2024年の茨城県不法就労者数は全国ワースト。こうした状況に、事業所や業界団体などを対象とした「適正雇用推進宣言制度」創設や啓発巡回によって不法就労防止も進めている。
人口減少の波は、全国と変わらず、茨城県でも深刻さを増す。県人口は今年4月1日現在で279万5677人まで落ち込み、1988年10月以来、36年ぶりに280万人を下回った。
「知事就任以降、人口減少対策のための県政運営をしてきたと言っても過言ではない」。2023年4月、厚生労働省の研究機関が50年後の人口推計を公表すると、大井川知事は、人口減少対策が多くの政策の根底にあると説いた。
命を守る医療政策もその一つだ。県内を3区分した「医療提供県域」を設け地域医療の広域連携を図るほか、県立中央病院(笠間市)と県立こども病院(水戸市)の統合も進める。「病院が互いに機能を補完し合い、強い医療体制をつくる」。将来にわたり、継続可能な医療提供体制構築も視野に入れる。
全県域を対象とした水道事業の経営統合により、将来的な行政サービスの維持も見据える。人口減少に伴う料金収入減少で今後の水道料金値上げが避けられない中、事業基盤の強化を目指す。
ただ、県内の「南北格差」は拡大の一途だ。つくばエクスプレス(TX)沿線を中心に県南地域は人口が増えているが、県北や県央などを中心とした地域は減少に歯止めがかからない。
大井川知事は17年の就任後初となる組織改編で「県北振興局」を設置。完成すれば全長約320キロに及ぶ山間部の「常陸国ロングトレイル」コース整備や、JR水郡線の沿線地域活性化に向けた催し、旅行企画に対する支援など、多様な対策を進めてきた。
格差解消は道半ばにある。定住者や交流人口の増加、観光誘客の推進など、取り組みの成果がどう実を結ぶか、真価が問われる。