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【茨城・選定医療費1年―救急現場の今と未来―】 (下) 《連載:茨城・選定医療費1年―救急現場の今と未来―》(下) 県民理解 浸透半ば 認知5割、周知課題

県主導の「選定療養費」の取り組みを知らせるポスター=水戸市笠原町の県医師会
県主導の「選定療養費」の取り組みを知らせるポスター=水戸市笠原町の県医師会


茨城県主導の「選定療養費」の取り組みが昨年12月2日に始まって1年がたつ。県内の救急医療体制を維持するためには、県民の正しい理解が欠かせない。不要不急の救急搬送を避けるとともに、救急搬送を利用すべき人が要請しない事態を防ごうと、県は広報紙やインターネット、チラシなどを使って取り組みの趣旨を広く伝えてきた。

県医師会によると、対象23病院が9~10月に救急搬送を受け入れた件数は計2万1819件。このうち軽症患者を搬送した件数が前年同期に比べて17.2%減る一方、入院が必要な中等症以上の患者搬送は7.6%増えた。

同会の間瀬憲多朗副会長は、取り組みについて「救急医療の逼迫(ひっぱく)緩和や救急車の適正利用に一定の効果があった」と評価する。別の医療関係者も同様の認識を示した上で、「一定の効果があるということは、取り組みが県民にある程度周知されているということ」と話す。

一方、県が7月に行ったインターネット調査によると、回答した県内在住の1000人のうち43.9%が「選定療養費」について「知らない」と答えた。救急搬送が大病院に集中する県内の救急医療の現状について「知らない」と答えた人も54.1%に上った。

石岡市の広報を通じて取り組みを知ったという同市、パート、浅尾貴子さん(54)は「医師の負担軽減(のため)には仕方がない」と趣旨を踏まえて理解を示す。その一方で「自分の周囲は取り組みを知らないと思う」と話し、周知は不十分との認識だ。

「知らなかった」と答えたネパール出身で、かすみがうら市の会社員、ギミレ・ザナクさん(34)は、救急搬送なら夜間や休日でも専門医がいる病院で確実に受診できるといい、「必要なら、お金がかかっても救急車を呼ぶ」と話す。取り組みの趣旨が県内在住者に十分に浸透していない状況をうかがわせた。

県医療政策課の担当者は調査結果などを踏まえ、「『選定療養費』の周知は十分ではない」として、今後も広く県民に伝えていく方針を示す。

来年2月には、救急車を呼ぶか迷った際の電話相談「#7119」「#8000(15歳未満)」の活用を呼びかけるマグネットシート約21万枚を県内全ての小中学校に配る予定だ。母子手帳やお薬手帳に貼るシートも配布する。

県内在住の外国人に対しては、生活の困りごと相談や情報提供などを母語で行う県認定の「IBARAKIネイティブコミュニケーションサポーター」が、医療機関に同行して通訳する。ビデオ通話や電話などを使って通訳する「多言語遠隔通訳サービス」の提供も始まっており、これらの利用を通じて「選定療養費」を含めた医療全般に関する理解を深めてもらう。

県は自治会などを通じて「選定療養費」の取り組みを住民に直接説明する出前講座も開いている。ただ、講座開催は現時点でわずか2件にとどまっている。

間瀬副会長は県民への周知を続けていかないと、「(効果が)また元に戻る可能性がある」と指摘する。「今後も関係機関との検証会議をしっかりと行い、啓発を怠らないことが重要だ」と注文を付けた。



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