《解説》12年ぶり市長交代の常陸大宮市 格差是正、実行力に期待
現職の引退で12年ぶりに市長が交代する常陸大宮市。人口減が著しい県北地域で多くの課題を抱える同市のかじ取り役は、前県議の鈴木定幸氏が無投票当選し、重責を託された。
今回の市長選は、異例の状況下だった。全国で新型コロナウイルスの感染拡大防止策が講じられる中で告示日を迎え、大勢の集まりを避け、市民に訴える場面をそがれた。夕方当選の知らせが届いても、市民を招いての盛大な当選報告会は行わず、万歳なしで花束贈呈などにとどめる静かな船出となった。
県議3期9年間を「たくさんの人と意見交換して自分の考えを伝え、地域の要望を形にできた」とする鈴木氏。現状を直視し、「県北山間の人口流出を防ぐ強力なダム(政策)の構築を目指す」と最重要課題を掲げる。
16年前の合併時約4万9千人だった人口は昨年9月には4万人を割り、今年3月1日現在で3万9635人にまで減った。具体策に生活インフラの整備などハード事業、教育施策や医療体制の整備などソフト事業を挙げ、「国からどういう予算を持ってくるかだ」と強調する。
同市は大宮、山方、美和、緒川、御前山の旧5町村が合併し誕生。昨年10月、市制施行15周年を迎えた。三次真一郎市長が3期務めて築いた土台を引き継ぐが、「行財政改革に取り組み、素地はつくってきた」と話す三次氏は「長年の課題である旧5町村の格差是正を意識的にやってほしい」と期待する。市の発展を懸けて鈴木新市長の実行力に期待がかかる。(常陸大宮支局・高畠和弘)