《連載:ウガンダ支援の現在地》(1) 茨城新聞記者ルポ HIV感染 高止まり 医療人材不足も深刻
赤道直下にある東アフリカの内陸国・ウガンダ。青空の下、赤い土と豊かな緑の木々が広がる。日本との距離は1万1000キロ。人口4600万人のうち約4割は1日1.9ドル(約300円)未満で暮らす。日本は1960年代後半、同国への政府開発援助(ODA)を開始。以来、国際協力機構(JICA)は医療や教育、農業の専門人材を派遣し、自立的発展を後押ししている。
■貧困
7月下旬、ウガンダ南西部ムピジ県。土でできた家の前で粗末なTシャツを着た少年が遊んでいた。
海外協力隊の一人、亀ケ川愛さん(27)は地区の貧困家庭を回り、痩せ細った親らに子どもたちの就学や食事の状況を聞いて回っていた。HIV(ヒト免疫不全ウイルス)陽性者の家では治療薬の服用状況などを記録していく。
現在、エイズ対策を行う非政府組織(NGO)で活動する。県や地元の病院、小学校などと協力し、貧困層のHIV陽性者やエイズ孤児の生活状況を調査するほか、就学を支援している。
■偏見
エイズを巡る同国の状況は改善しつつあるものの、依然厳しい。国連合同エイズ計画によると、エイズ関連死は30年前の約11万人から、2023年は約2万人に減少。ただし今も死因の2番目で、HIVの新規感染数は高止まりしている。
貧困やエイズへの偏見から治療を受けなかったり、治療法の存在を知らなかったりする人もいる。亀ケ川さんは「早期に診断を受け治療すれば、自分と大切な人の健康を守れるのだと伝えたい」と力を込める。
■改善
医療人材の不足も深刻だ。JICAの技術協力の一環で病院環境の改善に取り組む国際テクノ・センター(東京)によると、200床の病院で働く医師が数人だったり、50床の病棟を看護師が夜1人で担当したりするという。同社の田制弘さん(66)は「医師や看護師は、忙しすぎて十分な治療やケアをできないまま、目の前で人がどんどん亡くなっていくのを目の当たりにしている」と話す。
同社は06年に支援を開始。現在、18の地域中核病院で日本の「5S改善」(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)を導入し、「きれいで清潔な病院づくり」を後押しする。
統括する医学博士の半田祐二朗さん(72)は「患者は毎日来る。問題だらけでも諦めてはいけない」と強調する。同国は国際的な支援を受けながら、さまざまな対策を進めてきた。「協力が終わっても、政府や病院が自力で改善を続けられるよう手伝いたい」
茨城県教諭らが今夏、JICAが支援するウガンダを訪問した。研修に同行し、現状を報告する。