【J1鹿島シーズン回顧 黄金期への序章】 (上) 《連載:J1鹿島シーズン回顧 黄金期への序章》(上) 勝ち切る集団に成長 「鹿島らしさ」問い直す
長く苦しい無冠の日々を乗り越え、ついに載冠を果たしたJ1鹿島。今季就任した鬼木達監督(51)の下、心技体全てで成長を遂げた。2016年シーズン以来9季ぶりに勝ち取ったリーグ制覇を機に、いざ黄金期到来へ。常勝軍団復活ののろしを上げた栄光までの道のりを振り返る。
チーム始動直後のミーティング、鬼木監督は選手たちに問いを投げかけた。「鹿島らしさって何だと思う?」。さまざまな答えが飛び交う中で、指揮官は改めて定義づけた。個人の技術や精神、チームで育む絆など全てにおいて強くあること。そして、勝利への執着心を全面に押し出すこと。クラブ伝統の勝負強さを取り戻そうという鬼木監督の意志は固く、現役時代にたたき込まれた常勝のメンタリティーを理解しているからこそ、思いはひとしおだった。
エースの鈴木は「監督自身が一番負けず嫌い。『負けない』ではなく『勝ち切る』という、勝負へのこだわりがチームの共通認識だった」と言う。日頃のトレーニングから全てにおいて妥協を許さず、試合では泥くさくても勝ち点3をつかもうという指揮官の訴えは、チーム全体へ着実に伝播していった。
象徴的な出来事がある。優勝に向けて引き分けも許されない11月30日のJ1第37節東京V戦。均衡状態が続いた中で、貴重な決勝ゴールをねじ込んだMF松村は試合後、「腕がちぎれようが、肉離れしようが、足を伸ばそうと思っていた」と決勝点の場面を回顧した。10月25日の京都との首位攻防戦で、ラストプレーでFW鈴木が決めたゴールも足をつりながら執念で決めたものだった。
これこそが鬼木監督の求めていた姿だった。終了の笛が鳴るまで諦めることなく、どんな状況であれ全員で勝ち点3を奪いにいく。勝利への執念を強く押し出してタイトルをつかんだ選手たちへ、指揮官は「全員が体を張るなど必死な姿を見せ、自分が1年間言い続けたハードワークをやり続けてくれた」と満足げに目を細めた。
クラブアドバイザーのジーコ氏は言う。「チームにとってリノベーション、新しく進化するということは大事な要素だ。ただ、その中でクラブの哲学を忘れてはいけない」。鹿島というクラブの根底にあるものは何か、どのようにして20個の星を重ねてきたか。鹿島で原点を学んだ指揮官らしい「全て勝ちから逆算された」アプローチによって、伝統の勝負強さがさらにチームに浸透し、選手たちは「勝ち切る集団」に成長を遂げた。











