若手、ベテラン問わずに成長を求められるのが、今季の鹿島の大きな特徴だった。ボランチとしてピッチのかじを取った三竿は言う。「全員が高い基準を求められ、練習の中で成長したことがチーム力の向上につながった」。年齢やこれまでの実績を問うことのない競争意識の激化は、おのずと組織全体を底上げていた。

全体練習後、ほとんどの選手が自主トレーニングに励むのが今季の通例だった。中でもセンターバックの植田は、パスコントロール練習を欠かさず行う。これまで決して得意とは言えなかった足元の技術だが、鬼木監督の下では高いビルドアップ能力を求められ、「自分の成長が絶対に必要だと思った」と語気を強める。

成果は着実に表れた。鬼木監督が「うまくなっているんです」と笑顔で称賛したように、最終ラインから正確な縦パスを差し込んだり、相手のプレスを鋭いターンでいなしたり、昨季までは決して多くなかった場面が散見。植田は「自分に自信を付けさせることが大事だった」と日々の練習を振り返り、成長を強く実感していた。

ベテランがチーム力向上のために取り組む姿に、若手が触発されないわけがなかった。昨季試合にほぼ絡むことができなかった船橋は、「植田君や(三竿)健斗君がチームを引っ張ってくれたことで、自分も含めて若い選手たちも見習わないといけないと思った」と言う。鹿島の中心を担ってきた主軸たちの取り組みに引っ張られるように、ボランチとして欠かせない存在へと成長を遂げた。

船橋に限ったことではない。絶対的なセンターバックとなった金太鉉(キムテヒョン)、堅守を支えた津久井など、主力の長期離脱が度重なった苦境を乗り越えられたのは、若手の台頭があってこそ。優勝に大きく貢献した松村と荒木の成長も、目を見張るものがあった。

「試合に出る出ない関係なく、チームとして戦うことが大事。1年間皆で戦ってきたからこそのタイトルだし、誰一人として必要ない選手はいなかった」と植田。全員がチームのために尽くす姿はまさに、〝誰が出ても鹿島〟だった。