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《連載:いばらき暮らしいま ’25参院選》(1) 自動車部品製造に影 トランプ関税影響憂う

関税対象の自動車部品について説明する日東電気グループの阿部太洋社長=茨城町長岡
関税対象の自動車部品について説明する日東電気グループの阿部太洋社長=茨城町長岡


参院選は公示から9日で1週間。物価高騰や子育て環境など茨城県民の暮らしのいまを探る。

■死活問題。25%と50%では全く違う

「本当に死活問題。関税25%と50%では破壊力が全く違う」。自動車部品を製造し米国内に商社を持つ茨城町の日東電気グループ。阿部太洋社長(47)は悲壮感を漂わせる。

同社はエンジン部品のアルミダイキャスト製品が主力。溶融したアルミニウム合金を金型に圧入し、高圧で成形して鋳造する。日本国内の部品メーカーに納めるほか、米自動車大手フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)、欧州向けも多く製造する。

これまでにメーカーからの発注量が減るなどの情報は入ってきていない。ただ、関税引き上げによって米国内での販売価格が上がれば需要が落ち、結果的に発注が減る恐れがある。影響が及ぶまで、どれくらいの期間があるか不透明だ。

米国のトランプ大統領が、各国に対する関税措置を次々と発表した。これを受け、県内の輸出関連企業からも影響を懸念する声が上がっている。

トランプ氏は3~4月、国ごとの相互関税に加え、鉄鋼やアルミ、自動車などの特定品目に対し追加関税を課した。日米は今月9日の相互関税上乗せ措置の猶予期限を見据え、閣僚級協議を重ねてきたが、具体的な合意には至っていない。現在、日本の自動車とその部品には25%の追加関税が課されている。

ただでさえ自動車業界は先行きが見えない。欧州が電気自動車(EV)の普及に力を入れたものの、販売は失速。自動車メーカーは方針転換し工場を閉鎖するなどしたため、同社が納める部品もなくなった。さらにコロナ禍や混迷する中東情勢、ロシアによるウクライナ侵攻などにより、部品調達が難しくなり、原材料価格が高騰した。今後の部品の需要は全く読めない。

最低賃金引き上げによる人件費高騰の波も打ち寄せる。阿部社長は「関税対策と、賃金引き上げに向けた価格転嫁への支援を別の問題として切り分け、施策を進めてほしい」と願う。

欧米に輸出する自動車部品メーカーに鉄鋼製品を納める県央地域の製造業者。トランプ関税の影響は計り知れないと憂う。海外自動車メーカーの需要が4月から落ち込み、生産が2割減った。夏場の回復を見込んでいたものの、関税上乗せのあおりを受けて減産が続く恐れも出ている。

同社の営業担当者は「零細企業にとって数量が減るのは痛手」と肩を落とす。「日本国内の生産が落ち込まないよう導いてほしい」。日に日に切実さは増している。

常陽産業研究所によると、6月時点で県内輸出関連企業の受注に変化が見られたのは一部だった。だが、日米間の交渉次第で取引先企業が減産するリスクがあり、懸念の声が上がっているという。影響を受ける企業の対応策は「コスト削減をするようになるだろう」と見通す。



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