【いばらき暮らしいま ’25参院選】 (2) 《連載:いばらき暮らしいま ’25参院選》(2) 「脱炭素貢献は公共交通の使命」

■電力 再エネ転換課題 民間と連携 茨城県も後押し
茨城県水戸市住吉町にある関東鉄道(同県土浦市)水戸営業所。路線バス約50台が並ぶ中に真新しい1台がある。電気自動車(EV)バスだ。
6月に同営業所に配備された2台目のEVバス。軽油が燃料のバスと違い、二酸化炭素(CO2)を含む排気ガスを出さない。
モーターで走るため、エンジン特有の音や振動が少なく、客同士の会話が難なくできる。災害時には電源共有車としても使える。
同営業所の石山達広所長(51)は「環境によく、利用客から『静かで乗り心地が良い』と喜んでもらえる」と利点を話す。
政府が2050年までに目指す、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」。同社は21年から自治体コミュニティーバスを含めた路線バスにEVバスを導入した。現在計11台が走る。
「脱炭素社会に貢献するのは公共交通を担う会社の使命だ」と同社の担当者。EVバス導入を今後も進めていく方針だ。
県内各事業者が脱炭素の取り組みを進める中、クリーンな電力供給は大きな課題だ。
国は2月、中長期的なエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」を改定した。脱炭素化に向けて再生可能エネルギーを40年度の主力電源とし、原発の最大限活用も盛り込んだ。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展などに伴う電力需要増から、必要な発電電力量は23年度に比べて最大1.2倍の1兆2000億キロワット時に増えると推計する。
計画で自給率は15.2%から3~4割に上げた。再エネを40年度で全体の4~5割程度とし、23年度に68.6%を占めた火力発電は3~4割程度に減らす。
原子力を巡り、東京電力福島第1原発事故以降あった「可能な限り原発依存度を低減する」との従来表現は消え、原発回帰が鮮明になった。福島原発の廃炉の道筋が見通せず、原発再稼働への不安も根強い。原発を含めたエネルギー政策は大きな争点の一つになっている。
県は21年、茨城と鹿島両港を水素とアンモニアのクリーンエネルギーの拠点とすべく、官民連携の「いばらきカーボンニュートラル産業拠点創出推進協議会」を立ち上げた。化石燃料を使う火力発電や鉄鋼、石油など臨海部の各産業のエネルギー転換を後押しする。
モデル構築から社会実装まで総額250億円の支援体制を構築。水素、アンモニアの需要調査や民間事業者の実効可能性の調査、パイプラインなどのインフラ整備の検討を支援する。
県の担当者は「民間のエネルギー転換を支援し、脱炭素の取り組みを進めたい」としている。
6月には、水素製造が可能な次世代原子炉「高温ガス炉」の実証炉の県内設置を国に要望した。同県大洗町にある日本原子力研究開発機構大洗原子力工学研究所の「高温工学試験研究炉」(HTTR)では、水素製造技術の研究開発が行われており、県は将来的に水素供給に大きな優位性を持つ可能性があるとして誘致の実現を目指す。