《連載:いばらき暮らしいま ’25参院選》(4) 「子育てにお金かかりすぎ。次の出産考えられない」

■保育利用料、重い負担 支援、自治体で「格差」
「保育料が高い。驚くほど子育てにお金がかかる。この先を考えると、気軽に次の出産は考えられない」
茨城県水戸市大町の子育て支援・多世代交流センター「わんぱーく・みと」を訪れた同市城東、会社員、大森裕美さん(39)は8カ月前、第1子の長男を授かった。共働き世帯。今は1年間の育児休暇を取って子育てに奮闘する。
右も左も分からないまま購入したチャイルドシートやベビーカーは、高価な物で数万円。ミルク代やおむつといった日用品にも出費がかさむ。
今後は保育園に預けようと入園先を探すが、世帯収入で異なる利用料は月額約5万円に上る。休暇明けは時短勤務を視野に入れるも、収入が減るのは生活に大きな痛手だ。
「近隣の自治体は支援が手厚いと聞く。水戸でも同じような支援が欲しい」。切実な思いが募る。
県内の子どもの数(出生数)は減少の一途をたどる。2024年の出生数は1万3976人。20年前からほぼ半減しており、少子化克服に向けた子育て世帯への支援が課題となっている。
国は19年、子ども・子育て支援法を改正。認可保育所や幼稚園、認定こども園の利用料を、3~5歳は全世帯で無料とした。現制度で保育料がかかるのは0~2歳児。国は住民税非課税世帯を無料としたほか、年収360万円未満の世帯に対し第3子以降を無料、第2子を半額とした。
県は同年度、独自に保育料の軽減制度を拡充。第3子以降は世帯収入に関係なく全世帯を無償、第2子は年収360万~640万円未満の世帯を半額とした。
一方、県内で第1子は年収260万円以上、第2子は年収640万円以上で原則、補助がない。近年では物価高や実質賃金の減少も加わり、負担が増している。
県が昨年1~2月、保護者1万4000人を対象に行ったアンケート調査によると、回答した7427人のうち83.1%が子育てに関する金銭面で「負担がある」とした。このうち放課後児童クラブを含む保育園の利用料に負担を感じると答えたのは、約2割の1564人に上った。
こうした状況もあり、県内では23年4月時点で、21市町村が国や県の制度の対象外となる世帯に保育料の無償化や減額を実施する。
同県城里町は24年9月から町内在住者を対象に、子どもの数や世帯収入にかかわらず保育料を無料にした。予算は約1800万円。町の担当者は「移住対策の側面もある」と狙いを話す。
これに対し、人口の多い自治体は財政面から実施に二の足を踏む。水戸市の場合、4月時点の0~2歳児は5163人。「試算では第2子の無償化に必要な事業費は3億~4億円。完全無償化には9億~10億円かかる」と市幼児保育課の担当者は頭を抱える。
市こども政策課は「生まれた地域で支援に差があるのはおかしい」と強調。自治体の「格差」を是正し、全国一律の保育料無償化を早期に実現するよう「県が国に働きかけてほしい」と訴える。