【常総学院復活の春】 (1) 苦難のスタート
第93回選抜高校野球大会の出場を決めた常総学院の軌跡を追った。
昨秋の関東大会で準優勝し、5年ぶりの選抜大会出場を決めた。堅い守りとつなぐ打線で強豪校を撃破した。だが、新チームになった当初は「ボロボロな状態だった」と、田辺広大主将(2年)は振り返る。
秋季大会の前哨戦である県南選抜大会で、準決勝で藤代に1-2で敗れた。打撃も守備も振るわなかった。二回にエースの秋本璃空(2年)が連打で先制されると、六回には失策で2点目を献上。これが決勝点になった。打線は、奪われた全27のアウトのうち18がフライアウトだった。4本の二塁打を放ちながらも、得点はわずか1。とにかく、つながらなかった。
試合後のミーティングで「どうしたら勝てるのか」を徹底的に話し合った。「打線は調子にも左右されるが、守備は練習した分だけ良くなる」(田辺)と堅い守備から流れをつくることを重視した。長打を狙いすぎるあまり、球を捉え切れていなかったことも反省し、みんなで「このチームは長距離打者がいるわけじゃない。単打でつなぐ野球をしよう」と決めた。
さらに、大きく変わったのが試合に臨む意識だった。
藤代戦だけでなく、前回2019年の関東大会1回戦での逆転負けや、昨夏の代替大会3回戦敗退など、油断が招いた負けを何度も経験してきた。だからこそ、全員が「挑戦者の気持ちを持って、目の前の相手を倒すことに集中する」と意識。ナインは県大会の1回戦から一貫して口にし続け、悔しい敗戦を糧にしてチーム力が上がり、甲子園出場につなげた。