【いばらき 暮らしいま ’22参院選】 (1) 《連載:いばらき 暮らしいま ’22参院選》(1) 物価高騰、どこまで 賃金上がらず家計に影
■必要なもの全て値上げ。節約も限界
参院選は公示から29日で1週間。物価高騰や長引くコロナ禍、過疎化など茨城県内の暮らしのいまを探る。
高萩市内の食品スーパーを出てきた市内のパート従業員、古市聡子さん(36)は眉をひそめた。「数点の買い物なら、以前は千円を超えずに済んだのに」
小学3年の長男は食べ盛り。よく買うパンも小麦粉の高騰で値上がり。一方、パートの時給は変わらない。「時給が上がるか、物価が抑えられるか、どちらかにしてほしい」
店内の陳列棚の前では、同市の主婦、石堂睦美さん(60)が嘆く。「生活に必要なもの全てが値上げしている感じ。節約も限界」
食品スーパーのサンユーストアー(北茨城市)の中里彰宏取締役は「食用油、タマネギ、小麦粉など幅広い品目で仕入れ価格が上がった」と話す。店舗の光熱費は前年から急増。同社は春以降、5店舗に太陽光発電設備を増設し、経費の抑制に努める。
物価高が家計に影響を与えている。相次ぐ食品や燃料の値上げに、子育て世代や年金生活者を中心に節約に追われる。有権者からは有効な手だてを政治に求める声が上がる。
総務省が24日発表した5月の消費者物価指数(生鮮食品除く)は、前年同月比で2・1%上昇。上昇率が約7年ぶりに2%台に乗った4月に続き、2カ月連続で2%超となった。
原油はコロナ禍からの需要回復で昨年後半から値上げが本格化。ロシアのウクライナ侵攻に伴う供給不安が拍車をかけた。世界有数の穀物輸出国であるウクライナの有事は小麦やトウモロコシなどの価格も押し上げる。世界的な需要増や供給不足に加え、日本には円安がのしかかる。
帝国データバンクが6月に行った調査によると、4~5月に商品やサービスを値上げした企業は42%、6月に値上げしたか、1年以内に予定する企業は37%だった。値上げ実施済み・予定品目は1万点を超える。
担当者は「値上げの勢いは増している。コストアップの要因が解消される見通しはなく、値上げは夏以降も続く」と見込む。
物価が上がっても賃金が上がれば家計への影響は抑えられる。ところが、21年度の名目賃金(現金給与総額)の上昇は前年比0・5%にとどまった。
「物価が上がり、賃金が上がらなければ生活が苦しくなるのは明らか」。金融・税制が専門の筑波大の折原正訓助教は、景気悪化と物価高が同時に進む「スタグフレーション」を懸念する。ただ、現状は欧米などと比べれば、上昇幅は小さいとして「冷静に受け止めてほしい」と付け加える。
物価高を巡り、与野党は賃上げ促進税制の拡充や最低賃金引き上げなどを主張する。折原助教は「財源の問題はあるが、今は賃上げ税制を正当化しやすい。きちんと賃金が上がってくるかどうかという視点で各党の政策を見ることが大事」と指摘する。
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