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【いばらき 暮らしいま ’22参院選】 (5) 《連載:いばらき 暮らしいま ’22参院選》(5) 子ども、孤独な負担 「ケアラー」支援が急務

弟の介助について語る公立高2年の女子生徒
弟の介助について語る公立高2年の女子生徒


■家族の世話、打ち明ける場が欲しい

「結婚したとしても実家の近くに住みたいが、もし相手の都合で遠くに引っ越したらどうなるか…」

茨城県南地域に住む公立高2年の女子生徒(16)は、将来を考える上で、発達・知的障害がある弟を常に意識する。小学生当時から介助してきた。

両親と弟の4人暮らし。弟は物事が思い通り進まないとパニックを起こし、自らを傷つけることもあるため、目が離せない。食事の事故を防ぐため、大きい固形物は小さくし、熱いものは冷ましてあげる。

夜は母(46)が家事で忙しいので、代わりに寝かしつける。高校受験を控えた時期も、「自分が見た方が、弟は安心する」と勉強の傍ら介助した。

中学3年の時、心の不調で月に1日程度、学校を休んだ。コロナ禍、受験、弟のことなど、さまざまな負荷が重なった。

大人に代わって家事や家族の世話などを担う子どもは「ヤングケアラー」と呼ばれる。周囲から見えにくいところで重い負担を強いられ、学業や就学、心身などへの影響が懸念される。

「境遇が近い人が集まって、気持ちを打ち明けられる場が欲しい」。女子生徒は交流や相談の場の必要性を訴える。心の不調に陥った際、弟と同じような障害に理解がある養護教諭と出会い、救われたからだ。

弟がパニックを起こした時、けげんそうに接する人もいて「冷たく感じた。弱者への理解がもっと進めば、それが(ケアラーを)支える力になる」と、社会全体の課題と指摘する。

茨城県では、昨年11月開会の県議会で、いばらき自民党の議員提案により、県ケアラー支援条例が可決・施行された。

条例では県が進める施策として、支援に関する相談体制の整備▽家族を含む包括的支援▽修学・就業支援▽教育機会の確保▽市町村と教育、福祉などの分野で横断的な連携体制の構築-などを挙げる。

県推進計画の策定も条例に明記された。県は小中高生の実態調査、4月につくった有識者委員会の意見も踏まえて11月末までに策定し、予算化を図る方針だ。

厚生労働省が今年1月、全国の小学校350校を対象にした調査では、小学6年生の約15人に1人が「世話をしている家族がいる」と回答。該当者のうち、健康に問題がある、遅刻や早退をしてしまうと答えた割合は、ほかの子と比べ2倍ほど多かった。

昨年の調査では、世話をする家族がいる子は、中学生が約17人に1人、高校生が約24人に1人だった。

県も実態把握に努める。中高生や小学6年生の約15万5千人に調査を実施。8月にも結果を公表する方針だ。

有識者委員会委員長で日本ケアラー連盟理事の松沢明美氏=北海道大大学院保健科学研究院准教授=は、「ヤングケアラーにも大人のケアラーにも支援の手が伸びるよう、早急に法整備に取り組んでほしい」と強く求める。(おわり)



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