【いばらき 暮らしいま ’22参院選】 (2) 《連載:いばらき 暮らしいま ’22参院選》(2) コロナ後、日常いつ 正確な分析・発信不可欠
■感染対策、まだ過剰になりがち
「教訓が徐々に生かされてきた」
茨城県の鹿行5市の鹿嶋、潮来、神栖、行方、鉾田を管轄する潮来保健所の緒方剛所長は、約2年2カ月に及ぶ新型コロナウイルスとの戦いを振り返る。
管内の感染者が1日当たり約60人まで広がった昨夏の流行「第5波」は、対応が手探りだった。通常業務をほぼ止め、全職員でコロナ対応に当たったものの、保健師を中心に職員の長時間業務は続いた。
この反省を生かし、ピーク時に同230人まで急増した1月以降の「第6波」では、感染者の行動歴などを追う「疫学調査」の項目を絞り対応を迅速化。医療機関や各団体などと連携を進め、県薬剤師会から薬剤師などの応援も受けた。
「1日中、鳴り続けた」(緒方所長)電話には自動音声案内を導入し、受診問い合わせを県の受診・相談センターへ誘導。オペレーターも所内に配置し、業務のスリム化も図った。
感染者の「最初の窓口」となる保健所の態勢強化が進む一方、ポストコロナに向けた日常回復への道のりは、まだ途上だ。
「さまざまな対策が過剰になりがち。科学的な根拠に基づいていないケースは、まだ多い」。県医師会の安田貢新型コロナウイルス感染症対策監は、正しい感染対策が浸透し切れていない現状を説明する。
厚生労働省はマスク着用の指針を緩和し、「屋外で距離を保てる場合はマスク着用が不要」などとしている。ただ、同調圧力などからマスクを外しにくい風潮は残り、緩和は進んでいないのが実情だ。
第6波の月別感染者は、3月の4万427人をピークに、5月は1万4907人と前月から半減。6月も27日時点で5千人台とさらに減った。1日当たりの新規感染者数は200人前後で「下げ止まり」(県感染症対策課)状況にあるが、多くは軽傷や無症状で、重症化事例は従来のデルタ株に比べ大きく減少した。
「一人一人が正しい知識で予防策を取れば、コロナ前の日常がさらに近づく」。安田対策監は出口戦略をしっかり見据える時期にあることを指摘する。
政府は今月、新たな司令塔組織「内閣感染症危機管理庁」や、米疾病対策センター(CDC)をモデルにした「日本版CDC」を創設する方針を打ち出した。国や都道府県の権限強化に加え、専門家組織による科学的知見の収集や発信などを進める考えだ。
ポストコロナの動きは、感染拡大リスクが付きまとう。制限緩和の進展とともに正確なデータに基づいた対策、情報を正しく伝える仕組みが不可欠で時間も要する。コロナ前の日常がいつ戻るかは見通せない。
「政策を決めるには、エビデンス(根拠)が欠かせない。時間はかかるが、疫学調査など現場が積み上げてきた情報を分析することが重要」。緒方所長は、これまでの教訓を丁寧に受け止め、対策へ生かす必要性を訴えた。
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