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【いばらき 暮らしいま ’22参院選】 (4) 《連載:いばらき 暮らしいま ’22参院選》(4) 動かしてほしい。安全な原発はない 東海第2の課題山積み

東海第2原発の防潮堤の工事現場を視察する原子力所在地域首長懇談会の首長ら=5月9日、東海村白方(代表撮影)
東海第2原発の防潮堤の工事現場を視察する原子力所在地域首長懇談会の首長ら=5月9日、東海村白方(代表撮影)


■再稼働、渦巻く賛否
「1カ月の電気代が昨年より約500万円増えた。人件費10~15人分が消えている」。鉄道用モーターフレームなど鋳物部品を製造する伊藤鋳造鉄工所(茨城県東海村村松)の伊藤幸司社長(67)は嘆く。

料金のうち、特に原油などの燃料価格に応じて毎月変動する「燃料費調整額」が高騰。製造には多くの電力が必要な溶解炉の使用が欠かせず、製造コストに直接響く。「これからは海外生産が強まるかな」。自社ベトナム工場での生産強化を視野に入れる。

同社の3キロ北東には、日本原子力発電東海第2原発(同村白方)が立地する。伊藤社長は廃炉技術の確立などを前提としつつ、「電気代の高騰で事業者は厳しい。自然エネルギーでは賄えない。安全な原発を動かしてほしい」と話す。

エネルギー価格の高騰に加え、政府が2050年を目標に温室効果ガスの排出量実質ゼロとする脱炭素社会の実現を掲げたこともあり、原発再稼働を巡る議論は、賛否が入り乱れる。

原電は「資源の乏しい日本で原発の役割は大きい。脱炭素化の選択肢として、将来にわたり一定規模の確保が必要」と主張。東海第2原発も再稼働を目指し、国の新規制基準に基づく安全対策工事を進める。

工事の柱の一つが敷地の3方を囲む防潮堤だ。標高20メートル、厚さ3・5メートルの鉄筋コンクリートの壁により、最大高さ17・1メートルと想定する津波を防ぐとする。

原子炉の冷却に必要な電源の喪失に備える「常設代替高圧電源装置」、緊急時に原子炉や格納容器などを冷やす水をためる「代替淡水貯槽」の設置工事なども着々と進行。24年9月の完成を予定する。

工事が完成しても、再稼働の見通しは依然として不明瞭だ。

21年3月、水戸地裁は同原発の運転差し止めを命じた。「実現可能な避難計画や、実行する体制が整えられていると言うには程遠い」。裁判長が指摘した、実効性のある広域避難計画の策定は難航する。

策定を義務付けられた原発30キロ圏(UPZ)の14自治体のうち、策定済みは笠間、常陸太田、常陸大宮、鉾田、大子の5市町のみ。その計画も、緊急時を含む安定ヨウ素剤の配布体制、避難退域時検査(スクリーニング)で必要な資機材や要員の確保、複合災害時での第2の避難先確保など、課題は山積する。

要配慮者や自家用車のない人たちの移動に必要な車両の推計台数は、半径5キロ圏(PAZ)でバス約500台、福祉車両約千台に上る。県は「福祉車両は全く足りず、バスも民間車両が自由に使えるかどうか」として、確保のめどは立っていない。

同村の男性(78)は「『安全な原発』は日本につくれない。新たな『安全神話』をつくっている」と国や原電を批判する。

原発の再稼働は、東京電力福島第1原発事故と、その後を知る住民の理解をどう得ていくか、課題は残されたままだ。



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