【いばらき 暮らしいま ’22参院選】 (3) 《連載:いばらき 暮らしいま ’22参院選》(3)一度離れたら、静けさに気付いた 「関係人口」創出の動き
■人が減り、故郷衰退
「一度離れてみて、故郷の静けさに気付いた。人が減って大好きな茨城が廃れていくのが分かった」
今春、生まれ故郷の茨城県に家族と戻った葦原亜由美さん(33)は、上京したからこそ見えた故郷の風景についてこう話した。
太平洋を一望できる大洗町磯浜町の高台。「2地域居住」用の貸し別荘「OURoom(アワールーム)」の開業準備を夫の知さん(35)と進める。
「子どももいるし、考え抜いた。実行に移すまで約2年かかった」。視線の先には真新しい白いコンテナハウス。ようやく9月開業の目途が立った。
亜由美さんは水戸市生まれ。大学進学で上京し、一度は地元に戻り教員を務めたが、結婚後に千葉県に転居。コロナ下、IT企業に通う知さんが在宅勤務になったことを機に、帰郷を決心した。
単なるUターンではなく、人口減少が進む故郷に少しでも役立ちたいと考えた。移住しなくても気軽に滞在でき、地域の良さを知ってもらえる2地域居住の促進に取り組み始めた。
ただ、地域活性という志は持っていても、資金繰りが壁となる。手持ちでは足りず、大部分が融資。「補助金も受けたが全然足りない」。長男の陸ちゃん(4)と、まだ0歳の碧ちゃんを横目に話す。
2020年国勢調査の速報値によると、茨城県の同年10月1日現在の人口は286万8554人で、15年の前回調査から4万8422人減。年間1万人近いペースで減少している。
地域で偏りが見られる。県北地域の減少率が大きい一方、都内とのアクセスに恵まれたつくばエクスプレス(TX)沿線のつくば市は、全国でも上位の人口増加数を誇り、県内の「南北格差」は広がるばかりだ。コロナ下で進むテレワーク移住も、週に1、2度でも都内に通いやすいTX沿線は人気のエリアとなっているのが現状だ。
「県南地域に地の利があるのは確かだが、どんどん地方に目が向いている。県北、県央地域では『関係人口』創出の取り組みが大切になってくる」
移住促進などを担当する県計画推進課は、南北格差の緩和に期待する。
関係人口は、その地域と関わりを持つ人の数。葦原さん夫婦が提案する2地域居住をはじめ、ワーケーションやサテライトオフィスも関係人口を構成する。
移住は家庭事情や資金、地域性を考えると、ハードルが高い。各自治体は、移住までいかなくても、無理のない関係人口の創出に力を入れる。移住はその先に見据える。
葦原さん夫婦のように、地方の関係人口の増加に関わる人は増えている。同課は「サポート人材を募ったり、支援を拡充したり、コロナ下で生まれた新たなライフスタイルを応援していきたい」と話す。
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