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【茨城県議選 県政の課題】 (3) 《連載:茨城県議選 県政の課題》(3) コロナ共生、手探り

霞ケ浦医療センターのコロナ病棟で患者の対応に追われる医療スタッフ=土浦市下高津
霞ケ浦医療センターのコロナ病棟で患者の対応に追われる医療スタッフ=土浦市下高津


茨城県内の新型コロナウイルス新規感染者数が連日、千人を超えた11月半ばの週末。水戸市内に住む女性(66)は発熱と喉の痛みで、発熱外来を休日開設する医療機関に予約の電話をかけ続けた。

「予約はすでに埋まっています」「診療はかかりつけの方のみになります」

電話口から返ってきたのは、いずれも断りの言葉だった。ようやく受診が決まったのは週明けの正午前。医療機関への問い合わせは、10件近くを数えた。

落ち着きを見せていた感染の波は、再び拡大傾向を示し始めた。11月の感染者数は5万人を超え、茨城県内の流行は「第8波」に入った。さらに年末年始に向け、季節性インフルエンザと同時流行の懸念も強まる。

「症状は軽かったが、高齢なので診察がどこからも断られるというのはとても心配」。女性は高脂血症を患う。重症化の恐れもあり、不安を募らせた。

新型コロナウイルスの感染拡大以降、土浦市の「霞ケ浦医療センター」では未使用だった病棟を改装し、コロナ病棟を開設する。約30床の病床は現在約8割が埋まり、医療スタッフは対応に追われている。

今夏の「第7波」では患者の急増に加え、職員やその家族にも感染が広がった。一般診療にも影響が及び、ほかの2病棟が閉鎖に追い込まれる事態にまで発展した。

「予定していた入院や手術は、可能なものから延期してもらった。新たな救急を受け入れることもできなかった」。県医師会の副会長を務める鈴木祥司院長は、当時の厳しい状況を振り返る。

医療逼迫(ひっぱく)を抑えるため、県は9月初め、全国に先駆けて感染者の全数把握を限定し、現場負担を軽減させた。県医師会と連携した発熱外来の拡充も続けるほか、来年1月にはつくば市内に介護機能付き臨時医療施設も開所するなど、安定的な医療提供への体制強化を急ぐ。

感染力が強まる一方、重症化のリスクは低下している。県感染症対策課によると、11月以降の重症化率は80歳以上で1.6%、60~70代で0.3%、40歳未満では0.01%にとどまり、季節性インフルエンザと同水準まで下がった。

県はすでに、外出自粛や営業時間短縮などの要請を原則として行わない方針に転換。国内でも全国旅行支援の継続や水際対策の緩和など、社会経済活動と感染対策を両立する機運は進みつつある。

治療薬やワクチン普及なども背景に、新型コロナの法的位置付けを見直す議論も始まった。インフルと同じ「5類相当」への引き下げも視野に入る。

コロナとの共生へ手探りが続く。今後、どこまで進むかは見通せない。鈴木院長は「感染を広げないための自主的な行動と、リスクの高い人をしっかり守る体制が、コロナと共生するためには欠かせない」と話した。



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