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【茨城県議選 県政の課題】 (4) 《連載:茨城県議選 県政の課題》(4) 新規就農の壁高く

サツマイモを袋詰めする本田武士さん=茨城町常井
サツマイモを袋詰めする本田武士さん=茨城町常井


茨城県茨城町常井の「水戸ミライアグリ本田農園」の直売所兼事務所に、掘ったばかりのサツマイモが所狭しと並ぶ。代表の本田武士さん(26)は「今はサツマイモ。ホウレンソウなどの葉物は周年で、夏はトウモロコシがメイン」と話し、切れ目なく生産する。

水戸市出身。中学を卒業後、知人の農家でアルバイトしたことがきっかけで就農し、2018年に同農園を立ち上げた。

肝心の農地は自ら足で探した。同町内で耕作放棄地を見つけると、近くの家のインターホンを鳴らし、土地の所有者を尋ねた。その努力とバイト先である農家との縁で、近所の人から80アールを貸してもらえた。

「相手は知らない人に貸したくない。信用を積み重ねていくしかない」

埼玉県新座市出身で、城里町で和牛繁殖業を営む吉田祐実さん(33)も同じ意見だ。

県立水戸農高を卒業後、県内の農場に就職し、昨年10月に独立。土地探しには約1年かかった。町内の耕作放棄地を複数選んで窓口に連絡を取ったが、相続の問題などで断念。困っていると、知り合いの農家が、町内の別の農家を紹介してくれた。「空いている区画を貸してほしい」と頼み込み、昨年7月、ようやく賃貸契約を結んだ。

「とにかく相手に覚悟を伝えること。地域の方は、過去にすぐやめて出ていった人のことも覚えている」と話す。

本田さんや吉田さんのように、非農家出身の新規就農者にとって、土地確保は一つの壁となる。

条件のいい土地は競合が多く、貸し手側は付き合いの長い地元農家を優先するケースが多い。技術や経験が乏しい中、人気のない日陰や水はけが悪い土地での就農は難易度が高いが、「最初はえり好みできない」(本田さん)と受け入れるしかない。

本田さんは「大きくやった方が収益性がいい」と計8ヘクタールまで拡大。ただ、隣り合った土地を借りられず、畑は2市町3地区に点在する。「集約させたいがなかなか難しい」と苦笑する。

農家の高齢化で人手不足が深刻化する中、新規就農の重要性は高まる。

20年の農林業センサスによると、県内で農業を主な仕事とする「基幹的農業従事者」は65歳以上が7割を占める。高齢化が加速する中、県内の農業経営体約4万5千件のうち、「5年以内に農業を引き継ぐ後継者を確保している」と答えたのは、2割の約9600件にとどまっている。

一方、20年度の新規就農者数は357人で、このうち青年(16~44歳)は85%の304人で、比較的若者が多いことが県農業経営課のまとめでも分かる。

持続可能な農業の実現には、いま以上に新規就農者が参入、定着しやすい環境づくりが求められている。



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