【2025 暮らしと茨城県予算】 (3) 《連載:2025 暮らしと茨城県予算》(3)観光誘客に独自色 DC企画、磨いて定着へ

寒さが厳しい2月中旬。こたつを積んだ手こぎのろ舟が、茨城県潮来市の前川をゆったり進む。暖を取り、くつろぎながら水郷の景色を楽しめるとあって、客からは「居心地がよい」と好評だ。
「冬のこたつ舟」は2024年実施された大型観光企画「茨城アフターデスティネーションキャンペーン(DC)」の一環で始まった。「家族で貸し切りのように乗ってもらえる」。ろ舟を運航する「いたこ」の清水敏幸さん(62)はアピールする。
ろ舟は四季を問わず乗船できるが、乗客は初夏の「水郷潮来あやめまつり」の開催時期に集中する。通年運航と、まつりの時期とは異なる乗り場をどう周知するかは悩みどころだ。
こたつ舟は来年度も冬季に運航する予定。今後はサービスの充実化で定着を目指す。清水さんは「手こぎ体験などを商品化し、外国客も呼び込みたい」。誘客に向け、県には「PR面の協力があれば助かる」と話す。
22年からの3年間で実施された茨城DCは、「体験」を掲げて茨城県の自然や文化などと結び付けた独自企画を展開した。他県にない体験観光を創出し、持続的に誘客と観光消費を生み出すコンテンツに仕上げることを目指した。
最終年のアフターDCでは、過去2年の課題を洗い出して改善。自治体や観光事業者が企画した砂浜のライトアップ演出や工場夜景クルーズは、前年より集客や収益が向上した。
ただ、経済効果をもたらす観光消費の拡大に向けては「宿泊が見込める夜や朝の企画を増やす必要がある」と、県観光戦略課の担当者は指摘する。さらなる集客についても「茨城の観光の象徴となるフラッグシップ(旗艦)のコンテンツを増やす必要がある」と強調する。
茨城県は国営ひたち海浜公園(ひたちなか市)のネモフィラ、いばらきフラワーパーク(石岡市)のバラをはじめ、多様な花の名所がそろう。県は来年度、これらの「花絶景」や茨城DCの「体験」を活用。花の景観の独占や食事との組み合わせといった特別感ある企画を展開し、茨城県観光の主力に磨き上げて定着化を狙う。
他県にない企画はプロモーションも集中的に実施する。印象的なPRデザインを制作し、インターネットやインフルエンサーとの連携などで、国内外に広く周知する。
インバウンド(訪日客)対策は、観光地にWi-Fiやキャッシュレス決済を導入し、外国人らの利便性を高めて誘客促進を目指す。ネット上の評価や交流サイト(SNS)の検索数、クレジット決済の情報を観光客の動向把握や企画の改善につなげる取り組みも実施する。
観光産業は裾野が広い。振興は茨城県の活性化につながる。「DCに続く政策を展開し、稼げる観光地域づくりを進める」。県観光誘客課は意欲を示す。