【2025 暮らしと茨城県予算】 (4) 《連載:2025 暮らしと茨城県予算》(4)猛暑に負けぬ農業 気候変動、新品種や技術

「夏場は朝からすでに30度を超える日もある。昔とは気候が違う」
茨城県いちご経営研究会の鷺谷一雄会長(62)は同県筑西市内のハウス20アールで、県オリジナル品種「いばらキッス」と定番の「とちおとめ」を生産している。イチゴの栽培を始めて今年で22年目になる。
苗づくりで特に影響を受けるのが猛暑だ。鷺谷会長は、エアコンを効かせることでハウス内の温度を低く保ち、生育を促して収穫を早める「夜冷育苗」と、外気温で栽培する「普通育苗」を取り入れる。「普通育苗は焼けや極端な乾燥が出やすく、苗が枯れてしまう『炭疽(たんそ)病』も発生しやすくなる」と、高温の影響を話す。
夏の気温上昇に伴い、苗が育つ土の温度は40度以上になることもある。イチゴの実になる花の成長が止まり、出荷時期の遅れや実が小ぶりになるといった悪影響を及ぼすという。
約2年前から、炭疽病の予防などに役立てようと、育苗時に専用容器の下から水を吸わせる「底面給水設備」を導入。炭疽病の発生は1%未満になった。「気候変動はどうしようもない。できる範囲で対策をするしかない」と話す。
昨夏は記録的な暑さが続いた。筑西や龍ケ崎など県内6地点で、最高気温が35度以上となる猛暑日は過去最多。7月には古河市で県内の観測史上初めて40.0度を記録した。
県農業総合センター(笠間市)は、早生(わせ)性や高温耐性を備えたイチゴの品種開発に力を注いできた。同野菜育種研究室の石川友子室長(48)は「おいしさや収量、形の良さに加え高温耐性など難しさはあるが、産地の要望に応えられるよう開発を進めたい」と話す。
猛暑の影響を受けるのはイチゴだけではない。コメの一等米比率の低下もその一つだ。農林水産省の「2024年産米の農産物検査結果」(速報値)では、県産米の一等米比率は55.1%だった。前年の55.9%(確定値)に続き2年連続で50%台を記録し、近年で最も低かった。
県は本年度、暑さに強いコメの品種「にじのきらめき」を奨励品種に格上げし、県農業総合センター農業研究所(水戸市)では、本年度から28年度までの5年計画で「にじのきらめき」の特性を最大限に生かす栽培方法の開発などに乗り出している。
農作物の安定的な生産を支援しようと、県は新年度の予算案に気候変動対策関連事業として5800万円を盛り込んだ。イチゴやメロンの茨城県主要品目で高温耐性の新品種開発を継続して進めるほか、コメやリンゴなどの環境の変化に対応する生産技術対策を強化する。
新たに重要病害虫がまん延する地域を重点地区に設定し、総合防除の取り組みを支援する。事業を担当する県農業技術課の根目沢卓男課長補佐(50)は「農作物が大きな影響を受けないよう、対策をしっかり進めたい」とする。