【2025 暮らしと茨城県予算】 (5) 《連載:2025 暮らしと茨城県予算》(5) 医師不足なお深刻 地域枠広げ、修学資金改善

「茨城に恩返ししたい」
茨城県の医学部地域枠1期生で、外科医の川嶋久恵さん(34)=同県つくば市出身、筑波大卒。同制度の恩恵に感謝し、県内勤務9年間などの従事義務を終えた2024年4月以降も、地元の病院で働き続けている。
地域枠は地域医療を担う医師を養成する制度。茨城県は09年度の入学分から設けている。地域枠での入学者に対し、現行で国立大月20万円、私立大月25万円の修学資金を貸与する。県内勤務9年間のうち半分以上の期間を医師不足地域で勤務すれば返還が全額免除される。
川嶋さんは同県高萩市内など不足地域に勤めたことが「力を伸ばすきっかけになった」と振り返る。医師が少ない分、現場で多くの症例を経験。手術も任された。
現在は2歳児の母となり、仕事と子育てを両立している。無事に退院した患者の姿を励みに、「育ててもらった茨城のために」と奮闘する。
厚生労働省の「医師偏在指標」によると、茨城県は全国43位(24年1月現在)で、下位3分の1が該当する「医師少数県」となっている。県内2次保健医療圏別では、計9区域のうち鹿行、常陸太田・ひたちなか、日立、古河・坂東、筑西・下妻、取手・竜ケ崎の6区域が「医師少数区域」だ。
医師確保の厳しいやりくりが続く中、県は有効な対策として地域枠に注力してきた。当初の枠は筑波大の09年度入学分の5人だったが、25年度入学時で11大学70人まで拡大した。大学別は枠の多い順に筑波大36人、東京医科大8人、東京科学大(旧東京医科歯科大)5人と続く。
24年9月時点で地域枠の卒業医師は236人。枠の数を維持した場合の県推計は、36年時点で900人を超えると見込む。県医療人材課は「枠の増減は今後の医師不足の状況などを踏まえ検討していく」とする。
県は25年度、地域枠に限らず各修学資金制度を改善し、少数区域での着実な医師確保や医療充実につなげる。
地域枠では、卒業直後の臨床研修(2年間)から少数区域に勤務し、早期の義務履行を目指す医師が多かった。4月入学者からは、同研修期間を区域勤務の算定から外し、技量を養った状態で医師が不足する地域で力を発揮してもらう。
地域枠以外を対象とした2種類の修学資金貸与制度も、同研修期間を区域勤務の算定外とするなど、義務内容の修正を図る方針。これに伴い貸与額を手厚くし、「医師修学資金」は一律月15万円から、国公立大20万円、私立大25万円に引き上げる。海外医科大進学者限定の「海外対象医師修学研修資金」も、15万円から20万円に増額する。
同課の大高めぐみ課長は「多くの修学生医師に県内各地で活躍してもらい、県民が安心して医療を受けられる体制を整備していきたい」と語る。(おわり)