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【鉄路とまち TX20年】 (1) 《連載:鉄路とまち 茨城・TX20年》(1) 駅を核にまちづくり 新法で用地確保容易に

TX研究学園駅の東側に立つマンション群。その間をつくばエクスプレスが走り抜ける=つくば市学園南
TX研究学園駅の東側に立つマンション群。その間をつくばエクスプレスが走り抜ける=つくば市学園南


東京・秋葉原-つくば間の延長58.3キロを最短45分で結ぶつくばエクスプレス(TX)が24日、開業20年を迎える。約8000億円を投じて建設された高速鉄道の沿線には新しい街がつくられ、茨城県内外から多くの人が移り住んだ。TXがもたらした効果と課題を探った。

「都心より土地が安い」「発展する街という期待感がある」。つくば、つくばみらい、守谷のTX沿線3市には若い世代を中心に人口が流入、活況が続く。これまで県や都市再生機構(UR)、守谷市などが沿線や駅周辺の8地区を開発。6地区は既に事業を終え、残る2地区も2027年度までに工事が完了する見通しだ。

総施工面積は東京ドーム約370個分の1730ヘクタール。このうち、つくば市葛城地区はTX研究学園駅を中心に市街地を形成し、10年以降に市役所と消防署、警察署が移転。沿線でにぎわう街の代表格になった。

県によると、8地区の人口は開業前2600人だったが、今は30倍の7万8000人。人口増に合わせて税収も増え、沿線3市の住民税や固定資産税の増加率は県平均を軒並み上回る。

成功の理由は、1989年施行の法律、通称「宅鉄法」によるところが大きい。同法は、土地区画整理事業の中に鉄道用地をあらかじめ用意。「換地」という手法を用いることで鉄道用地を迅速に確保し、新駅を核とした一体的なまちづくりを生み出した。

当時、鉄道ルートや駅の位置は県が基本計画にまとめ、開発候補地区の選定は市町村が担った。

元つくば市職員で、開発を担当した宇津野卓夫さん(70)は「宅鉄法によって自治体が沿線計画をつくれるようになったことは画期的だった」と指摘。開業から20年を迎え、「地権者と一緒にまちづくりを考え、実行できたことは良かった」と振り返る。

元県職員の後藤和正さん(74)は開業時、新線沿線整備課長として県有地の販売を担当。豊かな自然や知的な環境を売りに「つくばスタイル」を大々的に打ち出し、子育て世代などを呼び込んだ。「当時は学校もできておらず、どうやって人を張り付けるかで必死だった。現在の発展は想像していた以上の早さだ」と喜ぶ。

沿線では今、次のステージに向けた取り組みが進む。県は沿線のイメージをさらに上げるため、葛城地区の県有地9ヘクタールを半導体関連企業の研究用地として販売。今秋には立地第1号の研究所が完成する。

TXみどりの駅から西3キロのつくばみらい市内には地元と県がそれぞれ32ヘクタール、70ヘクタールの工業団地を整備。つくば市もTX万博記念公園駅の西3キロに工業団地を検討中だ。市の担当者は「持続可能な自治体を目指す上で、雇用と税収の確保は重要な要素」と力を込める。

沿線地区の新住民からは「公共施設を造ってほしい」「道路の渋滞緩和策を」との要望も多い。日本全国で人口減少が進む中、どうやって今の人口を維持するかが今後の課題になっている。

★つくばエクスプレス

2005年8月24日開業。東京、埼玉、千葉、茨城の4都県を通り、計20駅ある。県内は守谷、みらい平、みどりの、万博記念公園、研究学園、つくばの6駅。JR常磐線の混雑緩和などを目的に整備された。踏切がなく、全駅に転落防止用の可動式ホーム柵を設置する。総建設費は8081億円。沿線4都県と11市区などが出資する首都圏新都市鉄道(東京)が運行する。最高時速130キロで特急並みの速さを誇る。



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