《連載:鉄路とまち TX20年》(3) 先進教育へ予算拡充 学校新設は判断割れる

「シャーク!」「ベリーナイス」。7月中旬、茨城県つくばみらい市立富士見ケ丘小2年生の教室。英語の授業で外国語指導助手(ALT)がサメのカードを示すと、子どもたちの元気な声が響いた。授業を受けた女子児童(7)は「英語の授業が一番好き。みんなでゲームする時もあり、楽しい」と目を輝かせた。
市はグローバル社会に対応する人材を育てようと、英語教育に力を入れる。国の教育課程特例校制度を活用し市立小全校で1年生から英語の授業を実施。本年度はALTを増やし保育施設にも派遣。幼少期から英語に親しむ環境を整えた。
先進的な教育を進めるのは、つくばエクスプレス(TX)沿線開発によって子育て世帯が増加したことが背景にある。市内の15歳以下は4月1日時点で約8500人。TX開業後の2006年3月末時点に比べると約5600人増えた。
教育の充実は予算規模にも表れている。TX開業間もない06年度は一般会計当初予算に占める教育費の割合は14%だったが、本年度は28%と2倍に。金額自体も本年度約90億円と06年度の5倍に増えた。
同じ沿線の同県つくば、守谷両市でも増加する子育て世帯に向け、情報通信技術(ICT)教育の推進や英語力強化など積極的な教育施策を展開。教育費は本年度一般会計当初予算で、つくば市212億円、守谷市68億円に上る。
ただ、判断が分かれるのが学校新設の可否だ。児童生徒数が増え、教室不足が課題となっている。
守谷市では、TX守谷駅近くの市立黒内小が1200人を超す「過大規模校」。一部住民は学校新設を求めるが、市は児童数のピークが来年度にも迎えるとの試算から新設を見送った。
対策として、本年度から一部通学区の1年生と在校生の希望者を対象に周辺2校にスクールバス通学できる制度を始めた。本年度は約60人が利用し、黒内小は想定より1学級減った。バス通学制度は過大規模校が解消されるまで10年ほど続く見通しだ。
一方、つくば市はTX開業後、研究学園、万博記念公園、みどりのの各駅周辺に小、中、義務教育学校を8校新設した。建設費は計約279億円。中でもみどりの地区の児童生徒数は、来年度には3000人を超える見込みという。
つくばみらい市も同様に、みらい平駅周辺に小学校2校を新設。児童数は5月1日時点で計2195人と、市全体の6割以上が集中する。27年4月には同駅から約2キロの住宅街に中学校を開校させる予定だ。ピーク時の同年には約1500人が通うと想定し、4階建て校舎など建設費は約99億円を見込む。
同市の町田幸子教育長は「みらい平地区の(児童生徒の)人数を考えたら、中学校は必要」と強調。まちの魅力を高めるためにも欠かせないとの認識を示した。