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【茨城県政とくらし ’25知事選】 (1) 《連載:茨城県政とくらし ’25知事選》(1) 最低賃金 人材確保へ底上げ図る 中小、支援の拡充要望

訪れた客を出迎える水戸プラザホテルの今井綾香さん=水戸市千波町
訪れた客を出迎える水戸プラザホテルの今井綾香さん=水戸市千波町


9月7日投票の茨城県知事選が告示された。医療や教育、農業など県民のくらしに直結する県政の課題を探る。

「いらっしゃいませ。ご宿泊のお客さまですか」。伊勢甚本社(同県水戸市)が運営する同市千波町の水戸プラザホテル。訪れた客を出迎えた今井綾香さん(30)はチェックインから部屋までの案内、観光案内などのカスタマーサービスを担い、パートタイマーとして働く。県の最低賃金が10月から大幅に引き上がる見込みで、同社が進める給与引き上げも加速しそうだ。今井さんは「子どもがいる身としてはありがたい」と会社の対応に感謝する。

同社は今春6.2%の賃上げに踏み切った。管理部の田山安彦取締役部長は「働いている人の生活の安定をしないと人材流出につながる。最大限の処遇にしている」と説明する。今後もパートタイムや新入社員を含めた給与の底上げを進めるという。

賃上げを巡っては、物価高の中、労働者から歓迎の声が上がる。一方で中小企業の負担感は強まり、経営支援が求められている。

県はこれまで最低賃金の積極的な引き上げを求めてきた。最低賃金は最低限の社会生活を保障するセーフティーネット。近隣他県から人材を確保するためにも重要な課題だ。

経済実態を示す総合指数で昨年度の茨城県は全国9位だが、最低賃金額は同14位。県は差額の解消を目指し、6月に連合茨城と経済団体の3者で、国が示す目安額に5~7年間で35円上乗せする目標について合意を取り付けた。

結果的に茨城地方最低賃金審議会は今月18日、本年度の茨城県の最低賃金を1時間当たり69円引き上げるよう茨城労働局に答申。国の目安額への上乗せはこれまで最大2円だったが、今回6円上回った。同じ目安額に1円上乗せした総合指数8位の兵庫とは5円分、差が縮まる見通しとなった。

労使間の擦り合わせに苦心した同審議会の清山玲会長(茨城大教授)は「3者合意の枠組みをつくってもらったことで中期的目標に向かい審議していく姿勢を共有できた」と評価する。

ただ、賃上げ実現へ課題は残る。

県央地域で複数の飲食店を展開する50代男性は「最低賃金の引き上げが企業経営を難しくしている」と言い切る。「バイトを抱える経営者は大変。大きな資本があるか身内での経営しか生き残らないのでは」と憤る。

県経営者協会の沢畑英史事務局長は企業経営への打撃を懸念し、「負担軽減に向けたきめ細やかな支援策の拡充を強く求めたい」と主張している。

審議会の答申では県の賃上げ支援金など各種制度について、本来必要とされる事業者に支援が届きにくいとし、支給要件の緩和を求めた。さらに、多くの中小企業が賃金の引き上げを進めている傍らで、「年収の壁によって年収や就業時間の調整が厳しくなっている」と指摘。人手不足に拍車がかかる悪循環が生じているため、国に抜本的な税・社会保険制度の整備を強く求めている。



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