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【茨城県政とくらし ’25知事選】 (4) 《連載:茨城県政とくらし ’25知事選》(4) 高校無償化 私立に追い風 競争拍車

県内の私立高が集まる私学フェアで、学校担当者から説明を受ける中学生と保護者ら=水戸市宮町
県内の私立高が集まる私学フェアで、学校担当者から説明を受ける中学生と保護者ら=水戸市宮町


「行きたい学校に行かせてあげたい気持ちも大きく、無償化は歓迎」。茨城県水戸市内で7月にあった県私学協会主催の「私学フェア」。40代の母親は中学生の娘の高校進学について、来春から始まるとされる私立高の授業料実質無償化に期待を寄せる。一方で「授業料の負担が減ったとしても、他にどれくらいかかるのか」と、進学にかかる費用で心配は尽きない。

フェアには、生徒と保護者ら約800人が来場し、24校が参加。私立高の担当者がブースを設置し、学校生活や費用面などの質問に丁寧に答えていた。

ある私立高の担当者は「無償化は追い風」と歓迎しながらも、政府が検討する公立高併願制を念頭に「より特色をアピールして選ばれる学校になる必要がある」と先を見据えた。

私立高の授業料実質無償化は、世帯年収に関係なく、私立高に通う生徒を対象に、国が全国平均授業料に相当する額(年45万7000円)を上限に支援する内容だ。公立高では既に実現している。私立高の無償化を巡っては、施設費など授業料以外の出費や「公立離れ」などの懸念があり、今後の進学動向が注目されている。

県内の進学状況を見ると、近年は約7割が公立高、残り3割が私立高へ進学している。公立高では、県教育委員会が県立高再編の一環でつくばサイエンス高(同県つくば市)を2023年度に開校。県内初の科学技術科を設置して大学レベルの研究環境を備えるなど、県立各校で特色や魅力づくりに力を入れている。

今春の県立高入試では、全日制全体の志願倍率が0.99倍(志願先変更後)と1倍を下回り、同校でも開校以来、定員割れが続く。県立の中高一貫校をはじめとした人気校に志願者が集まる半面、定員割れが続く高校も依然としてあり、「二極化」への対応が課題となっている。

私立高の授業料実質無償化を独自に先行して行っている東京都や大阪府などの自治体では、私立への進学が増えている。県内私立高(全日制)の24年度授業料は平均で年38万7000円。授業料が補助額を超える一部学校を除き、実質無償化は県内ほぼ全ての私立高で実現する見通しで、県立高への影響は避けられない。

県内で学習塾などを展開する市進教育グループ茨進(同県土浦市)の青木信行統括本部長は「第3志望までに私立を入れる子が増えている」と明かす。第1志望にする生徒も同じく増加傾向という。模擬試験作成などを手がける新教研(水戸市)の柴山信行社長は、手厚い大学進学支援や設備などを求めて私立高に流れる生徒が増える可能性を指摘する。ベネッセコーポレーション(岡山県岡山市)の日山敦司教育情報センター長は、政府が公立高の併願制を検討していることを踏まえ、「魅力化競争に拍車がかかる」とし、「各学校が特色を生み出せるサポートなどを行っていく必要がある」と話す。



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