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【茨城県政とくらし ’25知事選】 (3) 《連載:茨城県政とくらし ’25知事選》(3) 医療 病院薬剤師確保に注力

順天堂大薬学部で顕微鏡を使った観察を体験する茨城県の高校生たち=8日、千葉県浦安市
順天堂大薬学部で顕微鏡を使った観察を体験する茨城県の高校生たち=8日、千葉県浦安市


8日、千葉県浦安市の順天堂大キャンパス。教員から指導を受け、茨城県の高校生20人が光学顕微鏡を熱心にのぞく。観察するのはヒトの血液細胞。「難しい」と生徒は悪戦苦闘しながら、対物レンズの倍率や光量、ピントを調整して白血球をスケッチした。

県は昨年3月、同大薬学部に茨城県の「地域枠」を設置する協定を結んだ。地域枠は、県が入学者に修学資金を貸す制度。卒業後、県内の病院で9年間勤務し、このうち半分以上を薬剤師不足地域で働くなどの条件を満たせば返済が免除される。

この日の「順大薬学部体験ツアー」は地域枠を踏まえ、生徒の薬剤部への進学意欲を高めて将来、病院で働く薬剤師を確保するのが狙いだ。体験を終えた県立水戸一高2年、柳橋佑哉さん(17)は「病院薬剤師を目指す気持ちが高まった」とためになった様子だった。

一方、将来の職業に薬局で活躍する薬剤師をイメージする茨城高1年、大坂真優さん(16)。病院勤務は「夜勤があり休暇が取れない。プライベートに影響がありそう」と話した。

県薬務課によると、2022年末時点の茨城県の薬剤師は6709人で、このうち病院勤務は全国42位の1058人。厚生労働省が23年に公表した薬剤師偏在指標によると、茨城県の病院薬剤師の指標は目標の1に対し0.67で「薬剤師少数県」に位置付けられる。

2次保健医療圏別に県内を見ると、「つくば」「取手・竜ケ崎」を除く7エリアが病院薬剤師の少数区域だ。特に「筑西・下妻」「鹿行」「ひたちなか・常陸太田」で不足が目立つ。

病院薬剤師の生涯賃金は薬局薬剤師とほぼ同じだが、就職後しばらくは薬局薬剤師より低い傾向にあるという。このため、同課は奨学金の返済を抱える学生にとって、薬局やドラッグストア、製薬会社などの就職先が「魅力的に見えるのではないか」と推測する。

一部の病院薬剤師は、病棟で医師や看護師らとチーム医療に携わる。薬剤師が不足すれば、患者の体調に合わせた調剤や服薬指導ができなくなり、医療の質の低下が懸念される。

土浦協同病院薬剤部の椿浩之部長は「がんなどの最先端医療が進めば、専門性の高い薬を扱う病院薬剤師のニーズは今後、ますます高まる」と指摘。継続的に人材を確保していく重要性を強調する。

こうした現状から県は病院薬剤師の確保に力を注ぐ。24年度からスタートした「奨学金返済支援事業」は、大学既卒の薬局薬剤師や薬学部5、6年生に、月額上限2万5千円を支援。資格を持ちながら職を離れている潜在薬剤師の復職支援や、中高生対象の病院職場体験なども展開する。

県内では医師や看護職についても、継続的な人材確保や偏在是正が課題だ。県医療人材課の担当者は「社会情勢に合わせながら、県民の命を守る医療人材の確保に努めていかなければ」と語る。



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