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【茨城・常総水害10年 教訓を未来へ】 (2) 《連載:茨城・常総水害10年 教訓を未来へ》(2) 地域とつながる病院へ 訪問診療で災害弱者把握

訪問診療を前に打ち合わせする小笠原雅彦医師(右)と看護師=常総市水海道森下町
訪問診療を前に打ち合わせする小笠原雅彦医師(右)と看護師=常総市水海道森下町


医療機器が入ったリュックを背負い、医師と看護師が車に乗り込む。茨城県常総市水海道森下町の水海道さくら病院(病床93)は、在宅医療に力を入れる。毎月原則2回、地域に暮らす患者の家を訪れ、外来と同じように診察する。

同院在宅医療センター長の小笠原雅彦医師(35)は「家での診察環境に、家族を含めて本人の生きざまや価値観などの込み入った話をじっくりできる」と訪問診療の良さを語る。患者だけでなく家族へのケアも心がけ、自宅でも安心できる療養を支える。

健康なときも病気のときもまちのよりどころになる-。同院が、こう使命を打ち出したきっかけは10年前の常総水害だった。

2015年9月10日午後8時ごろ、雨は小康状態だったが、近くの川があふれ、水が入って来た。医療機器が集まる1階は床上約150センチの高さまで漬かり、閉院を余儀なくされた。被害額は約7億円。病院存続が危ぶまれた。「奇跡の復興」を掲げ皆で再生に取り組んだ。仮設テントで診察を続け、ボランティアの手を借りて院内を片付けた。不足する費用をクラウドファンディングで募ると目標額を大幅に上回り、約3カ月後に全面復旧にこぎ着けた。

「市民からの応援メッセージで職員のモチベーションも上がり復旧できた。地域への恩返しに何ができるかを考えた」。山崎俊男事務長(62)は振り返る。病院の在り方を再考し、地域の課題を見つめた。市内の高齢化率は約32%で全国平均を上回る。要介護認定者の重度は全国比で高い。国が在宅医療を推進する中、市内に対応する医療施設は少なかった。

医療から予防などのケアまでを一括で提供する「コミュニティホスピタル」を理念に掲げた。その一環で在宅医療にかじを切り、組織を改めた。

地域包括ケア推進室の山口賢さん(44)は「入院から退院、在宅での生活の質向上を一気通貫で行う。自宅でも過ごせるという選択肢が広がる」と狙いを説く。

地域活動も展開した。市内にある道の駅で健康づくりイベントを開いたほか、地元の高校生と一緒に病院の花壇をつくった。山口さんは「普段から病院とつながることで相談もしやすくなる」と、予防医療にひもづける。道の駅の店舗や市民団体と共にまちづくり団体の設立を目指している。

「地域とのつながりが災害時に生きる」。小嶋秀治院長(52)はコミュニティホスピタルの可能性に期待を寄せる。訪問診療によって、避難が難しい「災害弱者」を把握でき、行政との連携を描く。水害時は逃げ遅れや在宅避難者支援が課題となったからだ。

「まちを知ることは社会資源の把握になる。何か起きたときには食料や宿泊、居住などの面で患者を最適な支援者に渡せる」。小嶋院長は緩やかな結び付きの意義を語り、こう言い聞かせる。「いろんな人が労力を割いて今があり、地域に応えなくてはいけない」



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