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【茨城・常総水害10年 教訓を未来へ】 (4) 《連載:茨城・常総水害10年 教訓を未来へ》(4) 堤防整備の在り方問う 住民、一部勝訴も上告

新たに堤防が整備された鬼怒川の決壊地点で、当時の状況を話す片倉一美さん=常総市三坂町
新たに堤防が整備された鬼怒川の決壊地点で、当時の状況を話す片倉一美さん=常総市三坂町


茨城県常総市三坂町の鬼怒川左岸21キロ付近。10年前の常総水害で約200メートルにわたり堤防が決壊したこの場所に、片倉一美さん(72)はこれまで30回以上足を運んできた。

「堤防が低い場所から、危険な所から、順番にきちんと手を付けていれば水害は防げたはず」

この間、全国から視察で訪れた人らを現地へ案内するとともに、常総水害訴訟の原告団共同代表として、国の堤防整備の在り方に根本的な疑問を呈し続けてきた。

付近の堤防では当時、安全性を保てる「計画高水位」を下回ったり、頂部分の幅が狭かったりする箇所があった。

なぜもっと早く堤防をかさ上げしなかったのか-。裁判では、堤防改修の優先度を決める国の基準は「前提に誤りがある」などと批判してきた。

自らも住宅が大規模半壊などの被害を受け、車も水没。その後も毎年のように各地で起きる水害を見るたびに、「同じようなことが繰り返されている」と悔しさを募らせてきた。

裁判は、鬼怒川の氾濫が河川管理に不備があったためとして、住民らが国に損害賠償を求めた。提訴から7年。舞台を最高裁に移し、今なお続く。豪雨で川の水があふれた若宮戸地区と、堤防が決壊した上三坂地区の河川管理が適切だったかが争点となった。

一審・水戸地裁は2022年7月、若宮戸地区について、堤防の役割をしていた砂丘を河川区域に指定せず、太陽光発電事業者による掘削で危険性を生じさせた国の対応に「瑕疵(かし)があった」と認めた。

一方、上三坂地区は「国の改修計画が格別不合理と認めることはできない」として訴えを棄却。国が計画を策定する上で必要な治水安全度の評価方法は合理性があるとした。

東京高裁は今年2月、一審に続き、若宮戸地区については国の賠償責任を認定した。だが全面勝訴とはならず、判決後に「勝訴」の旗を掲げた原告団に笑顔はなかった。「このままでは河川行政は変わらない。勝ちはしたが、負けに等しい」。片倉さんは上告するに至った思いを強調する。

原告の一人、細川光一さん(75)は今、常総市から同県つくばみらい市に拠点を移し、夫婦で縫製業を切り盛りする。

インテリア関連の製品を中心に手掛け、丁寧な仕事で百貨店などからも信頼を得てきた。水害では常総市内にあった当時の事務所が約2メートル浸水。ミシンや裁断機のほか、布地や製品も泥で汚れ、被害は約1000万円に上った。

「立ち直るのに必死だった」という日々を乗り越え事業再開にこぎ着けたが、「いまだに水害が尾を引いて大変なことに変わりはない」と言う。

裁判の本人尋問でも被災者が置かれた厳しい現実を訴えた細川さん。「住民の目線に立って判断してほしい」と最高裁の判断に注目している。



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