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《連載:31年目の奇跡 J1水戸誕生へ》(5) ホームタウン支援拡大 地域波及効果に期待

水戸ホーリーホックのサッカースクールでコーチの話を聞く子どもたち=日立市会瀬町の会瀬スポーツ広場
水戸ホーリーホックのサッカースクールでコーチの話を聞く子どもたち=日立市会瀬町の会瀬スポーツ広場


2日夜、茨城県日立市会瀬町の会瀬スポーツ広場。プロサッカー選手を夢見る子どもたちが汗を流す。1対1で向き合い、小さなゴールにシュートを放つ。指導するコーチの声が響く。

J2水戸は2023年4月、日立、同県北茨城の両市で園児と小学生向けのサッカースクールを開校した。両市のホームタウン加盟が契機となり、県北の競技レベル向上やクラブの認知拡大を図っている。

水戸のJ1昇格決定と優勝はスクール生の励みだ。日立市の小学6年、小泉伝馬さん(12)の憧れはMF山崎希一。「ここで練習するようになって技術が上がった。山崎選手のような攻守に貢献できる選手になり、水戸でプロになりたい」と目を輝かせる。

水戸のホームタウンは広がりを見せている。同県水戸市のほか、17年に県央8市町村が、22年には県北6市町がJリーグから承認された。現在15市町村。桜川、筑西、石岡の県南・県西3市も加盟に向け準備する。

長年支える水戸市がホームタウンになったのは、クラブ創設時の1997年。「財政的な支援の要求はしない」とする確約書と引き換えだったが、99年には確約書を取り下げた。市は2006年、同市水府町の練習拠点「ホーリーピッチ」を貸与。11年にクラブが経営危機に陥ると、500万円を出資した。

同県城里町も強力に支えている。18年にクラブハウス機能を持つ練習拠点「アツマーレ」(同町小勝)を整備。上遠野修町長はJ1昇格による地域への波及効果を「経済的な潤いばかりが話題になるが、数字では計れない効果がある」と見込む。「J1で勝つようになれば、地元への愛着や誇りが育まれ、若者の目は地方に向く」と期待する。

支援が広がる一方で課題もある。同市小吹町の本拠地ケーズデンキスタジアム水戸の収容人数は1万人。J1ライセンスの下限(1万5000人)を下回る。今季終盤の観客急増で、駐車場のほか、トイレの排水能力や周辺の交通渋滞といった問題が浮き彫りになった。

スタジアムに関しては何より、水戸市とのしこりが残ったままだ。クラブ側が19年、客席増設に踏み出した市側と調整せずに、新スタジアム構想を発表した経緯がある。来年2月にはJ1クラブが参加する特別大会が始まり、残された時間は少ない。

プロスポーツがある意義を示し、広がるホームタウンの力を引き出せるか。小島耕社長(51)は話す。「18市町村の皆さんが選手を身近に感じられる距離感を大事にしたい。試合やそれ以外の活動を通じて、地域の人に元気になってもらえるようにしたい」(おわり)



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