【いばらき 減少時代を生きる】 (第4部 防災(1)) 《連載:いばらき 減少時代を生きる》第4部 防災(1) 消防団 維持したい 報酬上げ、任務限定も
消防車のホースから噴き出た水が、的に当たって水しぶきを上げる。茨城県鉾田市消防団の鉾田支団で2日に行われた夏季訓練。県内最大規模を誇り、諏訪、新宮、徳宿地区の約200人の消防団員が集まった。農家、自営業、会社員など職業はさまざまだ。
部隊整列の規律訓練から始まり、ホースの持ち方などの基本動作を確認する。火災を想定し、水槽と消防車をホースでつなぎ、放水する実践も行った。
団員になって15年目になる40代の分団長は訓練の様子を見ながら、「昔に比べて年齢層が高くなり、だいぶ厳しさはなくなった」と話す。以前は若手を指導する怒号もしばしば。いつの頃からか、そんな声はなくなった。
同市の消防団員の平均年齢は37歳。この10年で4歳上がった。背景に団員のなり手不足がある。分団長は「名前だけでも、というお願いすら拒否されるのが現実。入団しても少し厳しくすれば辞めてしまう。若手が入らないので分団長が退団できず、一般団員に戻ることもある」と嘆く。
■県消防安全課によると、県内の消防団員総数は、かつて10万人を超えていた。2013年に2万4112人となり、さらに10年後の23年は2万300人に減った。少子高齢化に加え、地域のつながりの希薄化、サラリーマンの増加、若い世代の価値観の変化-。多くの要因が複雑に絡み合う。
何とか歯止めをかけようと、自治体も必死だ。年額報酬や出動報酬の引き上げ、時間や任務を限定する機能別消防団の導入など、各地で打開策を模索する。
同市は本年度、団員の年額報酬を引き上げた。すでに平日昼間に活動できる団員を確保するため「市役所消防隊」を設置。団員に割引サービスなどを行う「消防団応援の店」も取り入れる。
北茨城市や牛久市なども、主に平日の勤務時間内に出動する市役所職員による消防団を結成している。
■鉾田市に次いで団員が多い行方市でも、なり手不足は顕著だ。各地区で統合再編され、市発足時の77部から本年度は69部になった。
船藤地区と五町田地区は4月に統合。それ以前、船藤は11人、五町田は9人にまで減っていた。統合して担当エリアが広がることで、「初期消火機能が低下するのでは」「地域コミュニティーの衰退を招く」などの懸念もあったという。
船藤消防団部長を務めていた茂木勇佑さん(39)=同市船子=は「消防団の役割を残すためには統合しかないと判断した」と振り返る。大雨で自宅が土砂崩れの被害に遭い、物置が火災に見舞われた経験がある。そのたび団員が駆け付け、重機が入れない場所から土砂をかき出し、寝ずに延焼に備えてくれた。
消火機器の確認、ポンプ操作法の練習、出初め式…。決して楽ではない。それでも茂木さんは願う。「地域に果たす役割の大切さを知ってもらうことが、団員確保や維持につながる」
◇地域の安全・安心を守る担い手が減っている。いつ、どこで起こるか分からない災害に備え、自助、共助の在り方が問われている。
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