【いばらき 減少時代を生きる】 (第4部 防災(2)) 《連載:いばらき 減少時代を生きる》 第4部 防災(2) 耐震改修 高齢化の壁 促進へ費用補助
大きな地震のニュースが流れるたび、木造住宅の耐震化を担当する茨城県潮来市都市建設課の電話が鳴る。「耐震化する方法を知りたい」「費用はどのくらいかかるのか」。
同課の担当職員はその都度、住まいを耐震化する必要性などを説明。負担額については、10万円近くかかる耐震診断が自己負担2千円で受けられること、耐震改修は経費の5分の4(上限100万円)が補助されることを伝えている。
しかし、実際に耐震診断を受けたのは、2023年度に1戸のみ。改修まで進んだケースはまだない。周知に向け、市は緊急促進アクションプログラムを策定。広報に力を入れるほか、補助制度の概要を記載したチラシを作り、職員が該当する住宅への直接訪問を続ける。
昨年10月には日の出地区の35軒を訪問した。「この家はどうせ私の代で終わり。子どもたちが住まない家にお金をかける必要はない」。説得を試みるが、各戸の反応は鈍い。住民の高齢化と改修費用の壁が立ちはだかる。
木造住宅の耐震基準は、大地震をきっかけに1981年と2000年の2回見直された。現行では、震度7程度でも倒壊しない設計とされる。旧耐震基準の住宅は大地震が想定されておらず、手を入れなければ倒壊する恐れもあるという。
石川県で1月1日に発生した能登半島地震では、こうした古い木造住宅が数多く倒壊した。亡くなった人の大半が圧死や窒息死など、家屋倒壊が原因となったことが判明している。被害の大きかった地域は高齢化率が高く、資金難などで耐震工事が進まなかった背景が浮かんだ。
県建築指導課によると、県全体の耐震化率は2005年の68%に比べ、13年が74%、18年が86%、21年が88%と徐々に増えてきたが、いまだ10万戸近くが未耐震化と推計される。
茨城県鹿嶋市宮中で1人暮らしをする大森一成さん(80)は昨年5月、居間を中心に補強する改修工事をした。自宅は1978年に建築した2階建ての木造住宅。市からの知らせがきっかけだった。
市の補助制度を活用して耐震診断を依頼。派遣された建築士が図面を見ながら家の内外を見て回り、後日下した判断は、基準を満たす「1.0」から大きく離れた「0.44」だった。
2人の子どもたちは既に独立し、県外で暮らしている。戻ってきて住む予定はない。「耐震化しても無駄だと迷ったが、ここで生活し続けるなら、きちんと改修しておいた方がいいと思った」と話す。
従来の壁の内側に12ミリの厚い壁が加わった。10日程度で工事は終了し、耐震基準を満たす家になった。
工事から1年が過ぎ、大森さんは「安心して暮らせるようになり改修してよかった。費用がかかった分、しっかり長生きしなくてはと前向きになった」と笑顔を見せる。
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