《連載:2025 茨城県内10大ニュース》(10) ユネスコ無形遺産に御船祭
■登録「誇り」地元沸く
茨城県北茨城市大津町に約300年前から伝わる「常陸大津の御船(おふね)祭」が11日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。県内では「山・鉾(ほこ)・屋台行事」として日立風流物に続き2件目。大祭を支えてきた地元は「まちの誇り」「うれしさは格別」などと喜びに沸いた。
御船祭は佐波波地祇(さわわちぎ)神社(同市大津町)の春季例大祭。神輿(みこし)のほか、御船歌を唄う水主(かこ)や囃子(はやし)方らを乗せた木造船が町内を巡回し豊漁と海上安全を祈願する。船には車輪がなく「ソロバン」と呼ばれる木枠の上を500人ほどの人力で引き回す。摩擦で発生する煙や迫力の綱引きが魅力だ。
起源は江戸時代中期とされる。開催には多額の費用と労力を要するため一時中断していたが、地元有志の呼びかけで1974年に復活。以来開催を5年に1度と決め、途切れることなく受け継がれている。79年には国選択無形民俗文化財に指定。2017年には国指定重要無形民俗文化財に登録されていた。
23年末には国の文化審議会が無形文化遺産の追加申請候補に決定。25年12月、保存・継承への熱意が認められ、待ちに待った吉報が地元に届いた。市は市内9カ所に横断幕と懸垂幕を設置したほか、公式LINEで「登録」の速報を流し、祝福ムードを演出した。
「築いてきた伝統文化を次世代に継承しなくてはならないという思いが強まった」。歓喜に包まれる中、保存会幹部はそろって継承への思いを口にし、登録を「終着点」ではなく「出発点」と捉えた。
今回の登録をきっかけに、祭りの担い手確保への期待も高まる。木造船が陸上を渡御するという全国でも類を見ない希少性から引き手は集まるが、地元の子どもたちを中心に構成されるお囃子方は、少子高齢化の影響で担い手の確保が難しくなっているという。
29年の祭りを主導する一人、保存会の鈴木平四郎副会長は「(御船祭を)見に行ったことがない子どももいる」と指摘。無形文化遺産登録の影響で「興味を持ってくれる人が増えるだろう」と希望を抱く。さらに、24年の祭りで負傷者が出たことに触れ「けがや事故がないことが大事。皆で協力し、しっかりやっていきたい」と気を引き締める。
地元や国だけでなく、世界の宝となった御船祭。課題を乗り越え、未来に伝えていく。(おわり)
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2025年12月23日(火)











