《連載:防災いばらき 未来へつなぐ 3.11震災15年》第2部(3) 避難支援阻む高齢化 担い手不足、「公助」補う
山あいの地域交流センター。講師のかけ声に合わせ、住民たちがゆっくりと手足を動かす。
2月中旬、茨城県常陸太田市天下野地区。太極拳を取り入れた健康教室に46人が集まった。「みんな生まれた所で元気に暮らしたいんです」。市社会福祉協議会と健康教室を共催した住民組織「天下野コミュニティ」の小川守会長(83)は目を細める。
2018年に発足した住民組織が力を注ぐのが「防災」だ。
災害時の避難に手助けが必要な高齢者や障害者らを把握する「避難行動要支援者名簿」。地区の名簿の更新を進め、自主防災会や民生委員らと連携してきた。名簿に基づき、毎年秋には避難訓練を行う。
地区に住む約570人のうち、要支援者はひとり暮らしのお年寄りらを中心に約70人。「自助」の力を高め、「共助」で助け合う。小川会長は「命を守る活動は何より大切だ」と先を見据える。
東日本大震災を教訓に国は13年、名簿の作成を市町村に義務付けた。
掲載基準は市町村の裁量に委ねられ、県内は全44市町村が作成済みだ。事前に本人の同意を得て、民生委員や自主防災組織などに提供するケースが多い。
一方、21年には要支援者の避難方法をあらかじめ定めておく「個別避難計画」の作成も努力義務になった。要支援者の安否確認や避難誘導を担うのが「避難支援等実施者」。原則として要支援者1人に、避難支援者2人が求められる。
ただ高齢化の波が避難支援者の確保に影を落とす。
天下野地区では担い手が不足しつつあり、高齢の避難支援者が目立ち始めた。1人で数人の要支援者を受け持つケースもある。地区外で働く避難支援者のカバーも欠かせない。
天下野コミュニティで名簿更新などに携わってきた長嶋猛夫さん(76)は、地元消防団との連携強化の重要性に触れながら言う。「共助で足りない部分は公助で補いたい」
市は本年度、避難支援者に対し、災害時に支援に行けるかどうか確認する「電話一斉配信サービス」を導入した。
避難支援者からプッシュ回線で「できる」「できない」の回答をもらい、支援を受けられない要支援者を早期に把握。災害対策本部に新設した「支援グループ」の職員が公用車で「公的避難」に向かう。
2月10日時点で要支援者810人に対し避難支援者は延べ646人。同サービスの訓練が進む中、市担当者は「とにかくやってみて、どういう形が良いかを模索していく」と話す。
筑波大の梅本通孝准教授(社会工学)は「個別避難計画という書類を作ることが重要ではなく、誰かが見に行ってあげられるという体制や気持ちが整っていることが大事」と指摘する。行政と住民の「顔の見える関係」が重要とし、「地域の人と人とのつながりの中で何か物事を考えていくこと」と加えた。
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