《連載:防災いばらき 未来へつなぐ 3.11震災15年》第2部(1) 福島避難者、続く交流会 古里の話題 日常支え
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から間もなく15年。被災地の今を見詰め、課題を追った。
健康体操をする人たちの笑い声が響く。
昨年11月、茨城県水戸市内のホテル。東京電力福島第1原発事故によって茨城県内に避難した人たちの交流会が開かれた。
事故前に福島第1の立地自治体や周辺地域で暮らしていた20人近くが、県内各地から集まった。開場前、久しぶりに再会した人同士が抱き合ったり、近況を語り合ったりする姿が見られた。午前中いっぱい使った交流会では、芸人兼トレーナーを呼んで健康体操に興じた。その後は茶会に転じ、全員が自己紹介しておしゃべりを楽しんだ。
妻と参加した杉本隆夫さん(75)は福島県浪江町から水戸市に移った。以前は浪江に頻繁に通っていたが、徐々に足が遠のいた。「浪江と完全に縁を切りたくない」。交流会は唯一、同郷者とつながりが持てる場で「昔の懐かしい話をすると感傷的になり、気持ちも晴れ晴れする。事故後のことを話せると気持ちも収まる」。古里を感じられる貴重な機会だ。
福島県富岡町出身で茨城県笠間市の杉本キミ子さん(81)は「何も知らないまちに来て、周りとはあまり交流がない」とこぼす。福島の自宅は約5年前に解体したため「帰れる場所はない」。交流会では積極的に話しかけ、大きな笑い声が絶えなかった。「たとえ顔見知りでなくても、避難した経験を分かり合えるのがありがたい。自由に福島弁をしゃべられて元気になる。心のよりどころ」と話す。
交流会を主催する茨城県社会福祉協議会は「ばらばらになった福島の人たちが集まって、地元の話で花を咲かせる機会をつくりたい。知り合いがいないと孤立しがちになる」と狙いを語る。年に数回、県内各地で企画している。
福島県の統計では、原発事故に伴う県外避難者は昨年11月時点で1万9176人に上る。茨城県には2170人が避難し、2022年以降、都道府県別で最多が続く。
事故直後は公的機関や民間団体、出身地別の当事者グループの交流会が各地で開かれた。県内避難者の支援ネットワーク「ふうあいねっと」代表の原口弥生・茨城大教授によると、コロナ禍で消滅するグループもあったが、再び立ち上げる動きもあるという。事故から15年になる今もニーズはなくならない。
原口教授は「最近の交流会でも新しく参加する方はいる。避難先でパートナーを亡くして孤立し、交流会に来るケースもよくある。これまでにない新たなニーズだろう」と話す。ふうあいねっとが昨年11月に開いた交流会でも、夫の死や子どもの自立をきっかけに初めて参加する人がいた。
原口教授は交流会の意義を強調する。
「原発事故で人生が狂ったことへの怒りやもやもやを言わなくても、同じ経験をした福島の人同士で楽しい時間を過ごす。たわいもない話ができる幸せが、日常を支える大きな力になっている」
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