《連載:防災いばらき 未来へつなぐ 3.11震災15年》第2部(7) 集団移転 交流途絶え 「高台で安全」寂しさも
眼下に太平洋が広がる茨城県北茨城市平潟町。防潮堤と道路に挟まれた「コミュニティ交流広場」には、ぽつんとベンチが置かれているだけになった。
かつて十数軒の住宅が並ぶ場所だった。2011年3月11日の東日本大震災による津波で壊滅的な被害を受けた。「家がなくなり海が見えるようになった。がらっとして寂しいよ」。水産加工業を営む斎藤朋弘さん(42)は漏らす。
家を失った被災住民の多くは移転を望んだ。市は高台に移す「防災集団移転促進事業(防集)」を国に申請。平潟地区で28戸、磯原地区43戸が、市が建てた復興住宅や他の場所への個別移転を選んだ。
斎藤さん方は移転せず残った。自社工場が被災したが、港に近い方が商売しやすいと考えた。子どもを通じて近所付き合いがあったが、多くの世帯が移転した。「(コミュニティーは)バラバラになった」。移転した人との連絡もなくなり、「仕方ない」と肩を落とす。
移転を選んだ人たちにも葛藤があった。
「海を見て暮らすのが怖かった」。平潟で両親と食堂を営んでいた渡辺修さん(55)もその一人。
震災当時、目の前で父と近所の女性が津波にのまれ、亡くなった。自身と母は生き残ったが、店舗兼自宅は津波で壊された。促進区域に指定され、解体後に市に買い上げてもらった。
14年3月、復興住宅に母と入居した。「寂しさもあったが高台で安全。救われた」と振り返る。散らばっていた住民は互いに助け合っていた。しかし、亡くなったり施設に入所したりして「当初の住民は少なくなり、(関係は)希薄化した」。
復興住宅の各棟にある集会室は、ほとんど使われていない。「母親に何かあったとき頼れる人も話し相手もいない」。隣近所が離れないような環境づくりを望んでいる。ただ市は、移転前の旧住民によるコミュニティーは「把握していない」と話す。跡地利用についても復興業務の担当者は「住居以外には使えるが、人が集まるものは造れない」と頭を抱える。
集団移転を災害前に選ぶ地域もある。同県大洗町は涸沼川沿いの低地、堀割・五反田地区72戸の事前移転を決めた。震災当時、高さ3メートルの津波が越水。避難したシジミ漁師、坂本勉さん(73)は、船2隻の新造や修繕を余儀なくされた。
津波想定が最大2~5メートルの危険地区に位置する。19年の大雨洪水でも床上浸水した。町は防集事業を使い、坂本さんは40年以上住む家を後にする。「二度と怖い思いはしたくない。本当は離れたくないけど仕方ないね」と語る。
1軒ずつ移転するため、自治機能が弱まる懸念が残る。町は跡地を移転前と移転先の新旧住民が集まれる場にすることも想定する。都市建設課は「住民の意見を聞き、若い人も含めたコミュニティーの維持も考えていければ」と見据えた。
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